問 題
エタノール中、ナトリウムエトキシドによる(S)-2-ブロモペンタンのE2反応では、3つのアルケンA~Cが生成する。以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。なお、Newman投影式Ⅰ~Ⅲは(S)-2-ブロモペンタンの配座異性体を表している。
- カルボカチオン中間体を経由する反応である。
- AとBをあわせた収率は、Cの収率より大きい。
- 臭素原子を塩素原子に置換した出発物質を用いると、脱離反応が遅くなる。
- ナトリウムエトキシドの濃度を変えても、反応速度は変化しない。
- 配座異性体Ⅰ~Ⅲのうち、ⅢからAが生成する。
解 説
選択肢 1 ですが
カルボカチオン中間体を経由するのは、脱離反応であれば「E1 反応」です。E2 反応は「付加 or 置換」と 「脱離基の脱離」が協奏的に一段階で反応進行し、中間体を経由しません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
E2 反応は E1 反応同様、Saytzeff 則に従います。すなわち、より置換基の多いアルケンが生成します。
選択肢 3 は妥当です。
ハロゲンの原子半径が「大きい」方が「脱離能が高く」、反応は速いです。Br よりも Cl の方が周期表の上の方なので原子半径が「小さく」、「脱離能が低く」なります。そのため、脱離反応が「遅く」なります。
選択肢 4 ですが
E2 反応の反応速度は「基質濃度」と「塩基濃度」双方に1次ずつ依存し、全体としては 2 次の速度式で表されます。従って、塩基である ナトリウムエトキシドの濃度に反応速度は依存します。「反応速度は変化しない」という記述は妥当ではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
脱離する Br のちょうど反対側であるアンチの位置にある H を塩基は攻撃します。そして、A は置換基 CH3 と CH2CH3 が トランスの位置になっています。
Ⅲの異性体に対して E2 反応がおきると CH3 と CH2CH3 は共に下側にあるため、cis 型が生成します。つまりⅢ からは B が生成します。A が生成するのは、CH3 と CH2CH3 が下側と上側に配置している Ⅰです。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
参考 有機化学まとめ 脱離反応
https://yaku-tik.com/yakugaku/yk-3-2-4/
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