薬剤師国家試験 第109回 問98 過去問解説

 問 題     

日本薬局方ヨードチンキの定量に関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。

(1) ヨウ素 本品 5 mL を正確に量り、ヨウ化カリウム0.5 g、水 20 mL 及び希塩酸 1 mL を加え、0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム液で滴定する (指示薬:デンプン試液2mL)。

  • 0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム液 1 mL=12.69 mg I

(2) ヨウ化カリウム 本品 5 mL を正確に量り、ヨウ素瓶に入れ、水 20 mL、塩酸 50 mL 及びクロロホルム 5 mL を加えて室温に冷却し、クロロホルム層の赤紫色が消えるまで激しく振り混ぜながら、0.05 mol/L ヨウ素酸カリウム液で滴定する。クロロホルム層の色が消えた後、5 分間放置して再び着色するときは更に滴定を続ける。

ここに得た 0.05 mol/L ヨウ素酸カリウム液の消費量 a mLと (1) の滴定に要した 0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム液の消費量b mLから次の式によってヨウ化カリウム (KI) の量 (mg) を求める。

  • ヨウ化カリウム (KI) の量 (mg) = 16.60 × [ オ ]

  1. 下線部 ア の物質を加えるのは、ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムの反応を促進させるためである。
  2. 下線部 イ の溶液は滴定直前に被滴定液に添加する。
  3. 下線部 ウ はヨウ素の色である。
  4. 本品 5 mL を量り、上記に従い、0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム液 (ファクター1.000) で滴定したとき、下線部 エ が 23.60 mL とすると、ヨウ素 (I) の含量は 6.0 w/v% である。
  5. 空欄 [ オ ] に入れるべき式は (a-b) である。ただし、(2) の反応は次のとおりである。

 

 

 

 

 

正解.3, 4

 解 説     

ヨードチンキは、ヨウ素 (I2)、ヨウ化カリウム (KI)、エタノール (C2H5OH) を含む水溶液です。


選択肢 1 ですが
ヨウ素は水に溶けにくく、ヨウ化カリウム水溶液には溶けやすいという性質があります。ヨウ素の定量においてヨウ化カリウムを加えるのは、ヨウ素を水に溶かすためです。「ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムの反応を促進させるため」ではありません。選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 ですが
指示薬のデンプン試液は、滴定終点付近で加えます。「滴定直前」ではありません。加水分解してしまう、デンプンに包摂されるヨウ素が多くなってしまい正確性への影響が大きくなる、ヨウ素が多い時に入れると濃くなりすぎて終点を過ぎやすいといった理由があります。選択肢 2 は誤りです。


選択肢 3 は妥当です。
ヨウ素の色です。


選択肢 4 は妥当です。
問題文にある「0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム液 1 mL = 12.69 mg I」より、滴定に用いた 23.60 mL と対応するのは 12.69 × 23.60 ≒ 300 mg の I (ヨウ素) です。

1 w/v % は「100 mL 中に 1g」です。5 mL 中に 300 mg のヨウ素が入っているのであれば、20 倍して 「100 mL で 6g」です。つまり 6.0 w/v % となります。


選択肢 5 ですが
(2)の反応式から、ヨウ素酸カリウム 1mol は 2 mol のヨウ素、及び 2 mol の ヨウ化カリウムと反応するとわかります。

使用した 0.05 mol/L のヨウ素酸カリウム a mL には、「0.05 × a mmol のヨウ素酸カリウム」・・・(3) が含まれます。反応したヨウ素 (I2) とヨウ化カリウム (KI) の 物質量の和は (3) の 2 倍です。つまり (0.1 × a) mmol です。これから反応したヨウ素の量を引けば、ヨウ化カリウムの量がわかります。

0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム 1 mL に対して I が 12.69 mg つまり、0.1 mmol 反応します。すると反応する「I2」は 0.05 mmol です。チオ硫酸ナトリウムが b mL になれば、反応する I2 の量は 0.05 b mmol です。従って、(0.1a – 0.05b) mmol がヨウ化カリウムの物質量です。

KI の分子量が 166 なので、求めるヨウ化カリウムの量 (mg) は (0.1a – 0.05b) × 166 = (a – 0.5b) × 16.6 mg です。従って、空欄 オ は (a – 0.5b) が妥当です。(a – b) ではありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 3,4 です。  

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