薬剤師国家試験 第109回 問41 過去問解説

 問 題     

下図に示すFickの法則に従う細胞膜透過において、薬物の透過速度と反比例するのはどれか。1 つ選べ。

  1. 膜の有効表面積
  2. 薬物の膜中の拡散係数
  3. 膜の厚さ (L)
  4. 薬物の膜への分配係数 (C1/Cout)
  5. 細胞外及び細胞内溶液と接する面の膜中薬物濃度の差 (C1-C2)

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

膜が厚くなればその分単位時間に透過する物質量は少なくなるだろうと考えれば、 3 を何となく選べるかもしれません。

別の考え方としては、濃度が異なる溶液を膜が隔てているということは単純拡散です。単純拡散は、 Fick の法則で表されます。Fickの法則:J = ーD dC/dx です。J が、流束(単位時間あたりの物質の通過量)、D が、拡散係数、dC/dx は、濃度勾配のことです。これをふまえて、各選択肢を検討します。


選択肢 1 ですが
膜の有効表面積が増えるというのは、通ることができる膜の領域が増えるということです。すると、薬物の透過速度 は当然増えると考えられます。よって、反比例の関係にはありません。選択肢 2 は誤りです。

 

選択肢 2 ですが
拡散係数 D が大きくなると、J は大きくなります。従って、薬物の透過速度 は当然増えると考えられます。反比例の関係にはありません。選択肢 2 は誤りです。

 

選択肢 3 は妥当です。
膜が厚くなれば、透過するのに時間がかかるようになると、常識的に考えても納得できるのではないでしょうか。


選択肢 4 ですが
分配係数 C1/Cout が大きくなれば、同様に C2/Cin の値も大きくなります。分配係数を K とおけば、C1=KCout、かつ、C2=KCin です。従って、膜中における濃度差である 「C1 ー C2」= 「K(Cout-Cin)」・・・(1)です。

Cin と Cout は溶液濃度なので定数です。つまり、(1)の式は「分配係数(K)が大きくなると、膜中における濃度差(C1-C2)が大きくなる」と読み取れます。濃度差が大きくなれば、濃度勾配も大きくなります。よって、J は大きくなります。反比例の関係にはありません。選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが
濃度差が大きくなれば、濃度勾配も大きくなります。よって、J は大きくなります。反比例の関係にはありません。選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 3 です。

類題 102-49
https://yaku-tik.com/yakugaku/102-049/

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