問 題
36 歳男性。身長 172 cm、体重 61 kg。アルコール性肝硬変による末期肝不全に対して、妻をドナーとして生体肝移植術が施行された。
術後 4 週間で退院し、退院 2 週間後 1 回目の診察において、退院時処方は処方 1 に変更されるとともに処方 2 も追加された。
退院 6 週間後 3 回目となる今回の診察において、タクロリムス及びエベロリムスの血中濃度が前回に比べて上昇していた。
退院当日から今回までの検査値等の推移と患者からの今回の聞き取り内容を示す。
(患者からの聞き取り内容)
- アドヒアランス良好、診察日に限り採血後に服用、禁酒は継続中
- 2 日前より足のむくみ、昨日夕方より口内炎を自覚
- 3 日前にスウィーティーを摂取
以上の経過から、薬剤師のアセスメントとして誤っているのはどれか。1 つ選べ。
- 口内炎は、エベロリムスの副作用である。
- スウィーティーを食べたことにより、エベロリムスの血中濃度が上昇した。
- エベロリムスの併用によりタクロリムスの血中濃度が上昇した。
- 足のむくみは、タクロリムスの副作用である。
- ST 配合錠の継続はエベロリムスの血中濃度の上昇と無関係である。
解 説
エベロリムスは mTOR 阻害薬です。
規格は 0.25 mg , 0.5 mg , 0.75 mg と、2.5 mg , 5 mg 及び、2 mg(分散錠), 3 mg(分散錠)があります。用法・用量が異なり、0.25 mg , 0.5 mg , 0.75 mg が、移植時の拒絶反応抑制目的で使用されています。2.5 mg , 5 mg は、抗がん剤として用いられてます。水に入れて飲む分散錠は、結膜性硬化症に用いられます。エベロリムス分散錠は、子どもが飲みやすいよう開発された製剤です。
エベロリムスは、シクロスポリンやタクロリムスと併用し、それらの薬剤の投与量減量、副作用の軽減目的で投与されます。「エベロリムス併用で、タクロリムス血中濃度が上昇」するのであれば、副作用軽減にはつながりません。従って、選択肢 3 が誤りと考えられます。ちなみに、選択肢 2 が正しいことからも推測できるように、エベロリムスは主に CYP 3A4 で代謝されます。こちらもおさえておくとよいです。
以上より、問 326 の正解は 3 です。
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