問 題
55歳女性。数ヶ月前から身体のだるさや疲れやすさを感じていた。最近、まぶたが重く物が見えにくくなってきた。さらに、食べ物を飲み込みにくくなったため、近医を受診した。
重症筋無力症を疑った医師から、診断のための検査をするにあたりエドロホニウム試験について薬剤師に問合せがあった。
問246
エドロホニウムに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
ただし、図は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の活性中心において、アセチルコリンが加水分解される際の反応機構及びエドロホニウムの構造式を示す。
- セリン及びトリプトファンと相互作用して、AChEを不可逆的に阻害する。
- セリンをリン酸化して、AChEを不可逆的に阻害する。
- トリプトファンをカルバモイル化して、AChEを可逆的に阻害する。
- セリンと共有結合して、AChEを可逆的に阻害する。
- トリプトファンと相互作用して、AChEを可逆的に阻害する。
問247
検査に先立ち、エドロホニウムの過度な作用発現に対処するために準備する薬物として、適切なのはどれか。1つ選べ。
- d-クロルフェニラミンマレイン酸塩
- アトロピン硫酸塩水和物
- アドレナリン
- ネオスチグミンメチル硫酸塩
- シクロスポリン
正解.
問246:5
問247:2
解 説
問246
めちゃくちゃ面白い問題ですね。
アセチルコリンエステラーゼ(AchE)の活性中心における加水分解の反応機構において、まず基質である アセチルコリンが、酵素活性中心における Trp 残基によりがっちりとキャッチされることが第1段階である という内容と読み取れます。
そして、問題文に与えられているエドロホニウムの構造を見ると、アセチルコリンとの類似部分構造である、特徴的な 4級アンモニウム部分が見られます。そこから、エドロホニウムは、AchE の Trp 残基と相互作用することで、基質である Ach と Trp 残基の相互作用を阻害する と考えられます。さらに、与えられた機構から 共有結合が形成されていないため「可逆的」な阻害と思われます。
試験本番では、なんとなく反応機構とエドロホニウムの構造式を見比べて、Trp との相互作用だろうから 3 or 5 で、カルバモイル化なんてしてないだろう、ぐらいでよいかと思われます。
以上より、問 246 の正解は 5 です。
問247
AchE 阻害なので、コリン作用が強くなりすぎることに対処する準備が必要です。つまり、抗コリン薬を選べるか、という問です。
選択肢 1 ですが
d – クロルフェニラミンマレイン酸塩は、抗 ヒスタミン薬です。
選択肢 2 は妥当です。
アトロピンは、抗コリン薬です。
選択肢 3 は妥当ではありません。
選択肢 4 ですが
ネオスチグミンは、エドロホニウムと同じ AchE 阻害薬なので、明らかに誤りです。
選択肢 5 ですが
シクロスポリンは、免疫抑制剤です。
以上より、問 247 の正解は 2 です。
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