薬剤師国家試験 第108回 問220-221 過去問解説

 問 題     

66 歳男性。C 型肝炎の既往歴あり。今回、肝硬変によると思われる腹水が出現し、肝性脳症の症状もみられたので、消化器内科に入院し治療している。現在の処方は以下のとおりである。

問220

現在の薬物治療について、この患者への説明として誤っているのはどれか。1 つ選べ。

  1. トルバプタンは、腹部などに溜まった余分な水を尿として排泄する働きがあります。
  2. ランソプラゾールは、食道・胃静脈瘤の治療期間中の潰瘍を予防する働きがあります。
  3. スピロノラクトンは、肝性脳症を改善する働きがあります。
  4. ラクツロースシロップは、腸管内でのアンモニアの発生及び吸収を抑制する働きがあります。
  5. ナルフラフィンは、かゆみを改善する働きがあります。

問221

この患者に補充している分岐鎖アミノ酸に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 筋肉ではエネルギー源として利用される。
  2. 主に肝臓において異化を受ける。
  3. 該当するアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、プロリンである。
  4. すべて糖原性アミノ酸である。
  5. 肝機能低下時には消費が増し、芳香族アミノ酸に対する比率が低下する。

 

 

 

 

 

正解.
問220:3
問221:1, 5

 解 説     

問220

処方について、簡単にまとめると、以下のようになります。

処方1
トルバプタン → 非ペプチド性バソプレシン受容体拮抗薬 腹水改善目的
ランソプラゾール → PPI  潰瘍予防目的

処方2
スピロノラクトン → K 保持性利尿薬 腹水改善目的

処方3
リーバクト → 分岐鎖アミノ酸製剤 肝硬変によるアミノ酸需要増に対応
ラクツロース → 腸内の乳酸菌増による、腸内環境整備目的

処方4
アミノレバン → 肝不全用経口栄養 
ナルフラフィン → κ-オピオイド受容体作動薬 かゆみ改善

これをふまえると、スピロノラクトンは「肝性脳症改善」が目的ではありません。

以上より、問 220 の正解は 3 です。

問221

肝機能(アルブミン合成、エネルギー産生、アンモニアの解毒など)を、肝機能低下時には筋肉が代わりに行います。その際 分岐鎖アミノ酸が消費されます。

選択肢 1 は妥当です。

選択肢 2 ですが
主に分岐鎖アミノ酸は、筋肉において代謝されます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
分岐鎖アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシンです。「プロリン」は含まれません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ケト原性アミノ酸が、ロイシン、リジンです。ケト原性アミノ酸かつ糖原性アミノ酸が、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンです。これら以外が糖原性アミノ酸です。(生化学まとめ ケト原性アミノ酸と糖原性アミノ酸)。従って、「すべて糖原性アミノ酸」ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
分岐鎖アミノ酸と、芳香族アミノ酸の比はフィッシャー比と呼ばれます。(参考 102-293 49 歳男性、C 型慢性肝炎)。

以上より、問 221 の正解は 1,5 です。

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