問 題
細菌の抗菌薬耐性化には種々の遺伝子もしくはその産物が関わっている。次の記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- グラム陰性菌の外膜にあるポーリンの増加は、カルバペネム系抗菌薬への耐性化を促す。
- 腸球菌のバンコマイシン耐性遺伝子 VanA の産物は、細胞壁のペプチドグリカン合成の代替経路で働き、グリコペプチド系抗菌薬の作用を回避する。
- リファンピシン耐性菌では、DNA ポリメラーゼ遺伝子の変異により、耐性が獲得されている。
- カナマイシン耐性遺伝子産物の中には、抗菌薬をリン酸化する酵素として働き、RNA ポリメラーゼへの結合を消失させるものがある。
- R プラスミドなどの伝達性因子を介して薬物排出タンパク質が過剰発現することは、多剤耐性化の一因となる。
正解.2, 5
解 説
選択肢 1 ですが
グラム陰性菌の外膜には、ポーリン (porin) と云う、タンパク質で出来た構造があります。物質透過を担っており、ポーリンが「減少」すると、薬剤浸透性が低下し、カルバペネム系への耐性化を促します。ポーリンが「増加」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
リファンピシンは、DNA 依存性 RNA ポリメラーゼを阻害して、RNA 合成を阻害することで殺菌的に作用します。従って、耐性菌で変異しているのは「RNA ポリメラーゼ」と考えられます。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
カナマイシンは、アミノグリコシド系抗生物質です。結合するのは「リボソーム」です。「RNA ポリメラーゼへの結合を消失」ではないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
一般に、環状二本鎖 DNA であるプラスミド上に薬剤耐性遺伝子をもつものを R プラスミドといいます。プラスミドは細菌間で伝達されることがあります。
以上より、正解は 2,5 です。
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