問 題
胎盤では、胎児と母体との間で物質交換が起こる。下図中の B (胎盤) では、母体のイムノグロブリン (抗体) が選択的に胎児側に移行することが知られている。次の記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。
- A 内の血管には、胎児の血液が流れている。
- B において、母親の赤血球が胎児側に移行し、酸素を供給する。
- B において、抗体のサブクラスのうち、IgA が選択的に移行する。
- 医薬品として使われる抗体は組換え体なので、母体から胎児側に移行しない。
- B 全体から採取した DNA には、母親と胎児の両方のゲノムが含まれる。
正解.1, 5
解 説
選択肢 1 は妥当です。
A は臍帯(さいたい)、いわゆるへその緒です。一般的に動脈2本、静脈1本あり、動脈内の血液は「胎児 → 胎盤」という流れです。静脈内の血液は「胎盤 → 胎児」という流れです。
選択肢 2 ですが
胎盤において、層状構造をした細胞の集まりによって、母体血と、胎児血は完全に隔てられています。従って「母親の赤血球が胎児側に移行する」わけではありません。ちなみに、この細胞の層状構造が、血液胎盤関門と呼ばれます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
IgG が胎盤を通過できることは基礎知識です。免疫グロブリンの中で唯一 IgG が通過できるため「IgA が選択的に移行」ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
組換え体だから移行しない というのはおかしいのではないか と判断できるのではないでしょうか。一例として、インフリキシマブ(遺伝子組換え)について、胎児移行が知られています。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
母親由来の組織と、胎児由来の組織が共にあるため、全体から採取した DNA には、両方のゲノムが含まれます。
以上より、正解は 1,5 です。
類題 106-171(薬物の胎児への移行に関して)
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