薬剤師国家試験 第108回 問114 過去問解説

 問 題     

二次元電気泳動は、等電点電気泳動と SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS – PAGE) を組み合せたもので、ある生体試料中の多種多様なタンパク質をそれぞれ固有の等電点と分子量の違いを利用して分離する方法である。

図 1 と図 2 は、二次元電気泳動の概要と実験結果を示したものである。

図 1 等電点電気泳動:pH 4 ~ 10 の連続的な pH 勾配を形成させた棒状のゲルを準備する。このゲルを用いて電気泳動すると、試料中の各タンパク質はそれぞれの等電点の位置までゲル中を移動する。

(注:実際にはこの段階ではゲルは染色しないためタンパク質は見えないが、図 1 の下段では電気泳動後にタンパク質が等電点で分離しているイメージを示した。)

図 2 SDS – PAGE:等電点電気泳動により試料中のタンパク質を分離した棒状ゲルを、SDS – PAGE の分離ゲルの上に移し、一次元目の等電点電気泳動と直角の方向に電気泳動する。タンパク質は、その分子量に応じた位置まで移動する。

電気泳動の終了後、泳動用のガラス板から取り出したゲルを洗浄し、クマシーブリリアントブルーでタンパク質を染色したところ、50 個のスポットを検出した。

図 2 中のスポット A は、等電点 5.8、分子量 56,000 のタンパク質である。

このようなタンパク質分析法とその実験結果に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1 つ選べ。

  1. 等電点が 5.8 より小さく、かつ分子量が 56,000 より大きいスポットは、4 つ検出されている。
  2. スポット A のタンパク質では、中性溶液中での分子全体の電荷が負になる。
  3. スポット B のタンパク質の等電点は、ほぼ 5.8 である。
  4. スポット C のタンパク質は、分子量 56,000 より小さい。
  5. タンパク質のスポットの位置は、リン酸化により、やや右上方向に移動すると推測される。

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
SDS – PAGE において、分子量が小さいタンパク質ほど、速く流れます。下図赤丸部分の4つのスポットが「等電点 5.8 より小さく、分子量 56,000 より大きい」に該当します。

選択肢 2 は妥当です。
等電点は、正の荷電と負の荷電が等しくなる pH です。等電点が 5.8 である スポット A のタンパク質は、中性溶液中、つまり pH 7 ぐらいの溶液の中では、pH が等電点よりも塩基よりなので負電荷が多くなります。その結果、分子全体の電荷は負になると考えられます。

選択肢 3 ですが
等電点は横軸のどこにあるかなので、スポット B のタンパク質の等電点は 6 ~ 7 の間です。ほぼ 5.8 ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
分子量 56,000 のスポット A よりも、スポット C が速く流れた = 分子量が小さい ことが読み取れます。

選択肢 5 ですが
リン酸化で OH 基がリン酸化するのは、COOH 基が増える場合と同様の影響と考えられます。つまり、等電点は 酸性側に偏り、スポットの位置は右方向にシフトすると推測されます。さらに、分子量は大きくなることをふまえると「やや右上方向」というのが「誤り」とはいえないと考えられます。

以上より、正解は 3 と思われます。

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