問 題
62歳男性。パーキンソン病にて治療をしていたところ、症状が進行し嚥下が困難になったので、経管投与が開始となった。この患者の妻が薬局に以下の処方箋を持参した。
処方箋を受け取った薬剤師は、医師に簡易懸濁法で投与することを提案したところ受け入れられた。薬剤師は、妻に簡易懸濁法による投与方法について指導することにした。
なお、今回の処方薬はすべて簡易懸濁法により投与可能である。
問320
この患者の妻に対する薬剤師の指導の内容として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- 朝は処方1~3までの薬剤を、夕は処方1と2の薬剤を、まとめて懸濁してください。
- 処方3の薬剤はカプセルを外してから、懸濁してください。
- 処方1と2の薬剤は粉砕してから、懸濁してください。
- 懸濁には、90℃以上の熱いお湯を用いてください。
- 薬剤が溶解したのを確認してから、投与してください。
問321
その後、介護が大変になったと妻より相談があり、薬剤師が介護保険について情報提供することとした。薬剤師の説明として、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ご主人の疾患の場合は65歳にならなくても介護保険が申請できます。
- 申請書類は薬局に提出してください。
- 要介護の認定は、心身の状態と主治医の意見をもとに判定されます。
- 要介護状態は、要介護1と2の2つに区分されています。
- 要介護認定を受けた場合は、介護保険と医療保険のどちらを適用するかは、薬局と患者の相談で決めます。
正解.
問320:1
問321:1, 3
解 説
問320
選択肢 1 は妥当です。
配合変化 などを連想し、一読目には選びにくい選択肢だったかもしれません。
簡易懸濁法は、言い換えれば「飲み込む → 消化管で溶解される」というプロセスを、「飲み込むのが大変だから先にある程度体内で行われる反応を先にしている」だけです。そう考えれば、まとめて懸濁させるというのは、「複数の薬を飲みこんだ後に消化管の中で起こる変化と同じ」といえます。そのため「簡易懸濁法で投与可能」である処方薬であれば、まとめて懸濁してかまいません。
選択肢 2~4 ですが
簡易懸濁法は、錠剤・カプセルをそのまま、あるいはコーティングに亀裂を入れ、温湯(約55℃)に入れ、崩壊・懸濁させ、経管投与する方法です。「カプセルを外して」ではありません。また「粉砕してから」ではありません。「90 ℃以上の熱いお湯」ではありません。選択肢 2~4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
ある程度溶けていればよく、「溶解したのを確認」する必要はありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問320 の正解は 1 です。
ーーー以下、国試には不要 補足ーーー
パーキンソン病患者の嚥下障害は
ほぼ必発 かつ 予後に大きく影響するため、早期に気づくことができた場合において、嚥下障害専門外来や、専門家である言語聴覚士などへのアクセスも提案できるとベターかと思われます。
ーーー以上、補足 終わりーーー
問321
選択肢 1 は妥当です。
40 ~ 64 歳 かつ、加齢に伴う疾病(特定疾病)が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。本症例の男性は 62 歳なので、40 ~ 64 歳に該当します。そして、パーキンソン病は、特定疾病の1つです。
選択肢 2 ですが
申請書類は、市町村(または特別区)に提出します。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
選択肢 4 ですが
本試験時点において、要介護状態は、要介護1~5の5段階に区分されています。2段階に区分されているのは、要支援状態です。(102-146)。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
介護保険制度対象となった場合、介護保険優先です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問321 の正解は 1,3 です。
ーーー 完全に雑感。国試不要。ーーー
選択肢 2 の記述を読んだ時
「あっ、これは便利」と思いました。薬局で介護関係の申請等もできたら・・・、「電子化された医療データの活用の先」って、こういう所だよなぁと連想しました。
今後、各自治体の中で、医療・介護制度が回らなくなる場所がさらに増えていく→集約化・効率化 が一層進むという流れは、規定事項だと 考えています。一方で、技術革新は進んでおり、これまでになかった解決法が生まれつつあるとも思いますが、既存の法的、制度的な縛りで、スピード感のあるシステムレベルでの変化は、なかなか実感できていない印象です。
例えば、この選択肢 2 の記述内容を
ある薬局が「やってみよう」と思ったとしたら、介護関係の申請を「代理」として行うことになりますが、例えば申請をうっかり忘れてしまった場合の責任はどうなるのか? 誤字に気づいて訂正しようとした場合において、代理人が 勝手に許可なく 訂正してよいのか? 申請窓口において、代理人としての立場を客観的に証明するために何が必要か? など、様々な 民法における「代理」の 応用問題が、具体的課題として広がっていきます。
このような制約に対して、一部区域を特区とすることで 法的・制度的制約をなくして実験的にシステムの活用を試験していったりする試みが、様々な分野で行われていたりします。そういった経験を全国に展開するためには、必要な法的整備がかかせません。このように考えると、法規・制度について理解を深めることの重要性を実感する 選択肢でした。
もう1つ連想したのが
現代におけるやりとりって、本当に「テキストデータ」のやりとりだということです。
本問 処方せん持ってきているのが、患者本人ではなく妻です。
(おそらく、10 年後には「パートナー」になっている。善悪は抜きに、非常にこのあたりの言葉の使い方は 近年センシティブであり、その流れは加速すると思われる)。
僕たちは「薬を渡す相手」について、全く目の前の肉体に関する情報からわからず、書面を通じてのみ、信用して薬を渡しているというのが、本当に違和感なく当たり前となっています。
でもこんな常識、紙・処方せんがあり、慣れ親しんだ流れだから成り立つものであって、普通に元気な 60 歳ぐらいの女性が 本処方の薬を 医師からこの薬を受け取ってと言われました。と口頭で述べたとすれば、かなり疑問ある処方となります。つまり、目の前の肉体は、処方せんデータの運び屋にすぎません。
そして、そのデータの運び屋としての肉体が、非常に、言い方悪いんですけど、データと比べるとどんくさい。すぐ疲れる、劣化する、早くない。これは本当に自然な流れとして 人体拡張 サイボーグ化が 当り前になるんじゃないかな、と妄想が広がりました。
そうなると、いわゆる「テセウスの船 問題」、つまり、少しずつ自分じゃないもので自分を置き換えていき、元の部分がなくなったが動いているものは、果たして元の船といえるのか問題が、一般的問題となってくる( ^ω^)・・・、うーん未来的。。。
ーーー 完全に雑感、終わり。ーーー
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