問 題
85歳男性。肺がんで入院治療を行っていたが、在宅で緩和ケアを受けることになり退院した。痛みに対して、アセトアミノフェン錠が投与されていたが、先日から痛みが増してきたので、オピオイドが処方されることになった。
終末期のため患者家族が服薬について管理している。現在の処方を以下に示す。
問316
患者家族への服薬指導として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- 痛みが強い時は、効果をあげるために処方1の薬剤をかみ砕いて服用してください。
- 便に錠剤の一部が排泄されていたら、鎮痛効果が弱まるので、処方2の薬剤を1回分服用してください。
- 処方2の薬剤を追加服用する場合は、5時間以上あけてください。
- 便秘になる可能性があるので、処方3が処方されています。
- 吐き気がおきる可能性があるので、処方4が処方されています。
問317
この患者家族が、在宅で調剤済みのオキシコドンを管理する場合、麻薬及び向精神薬取締法に照らし合わせ、正しい説明はどれか。1つ選べ。
- 「家庭麻薬」として管理する。
- かぎのかかる堅固な保管庫での保管が必要である。
- 管理者を決めて病院又は薬局に届け出る必要がある。
- 医師の許可があれば海外旅行に携帯できる。
- 不要となった残薬は調剤した薬局に返却できる。
正解.
問316:4, 5
問317:5
解 説
問316
選択肢 1 ですが
噛み砕いて飲む錠剤は、チュアブル錠です。徐放錠コーティングの意味がなくなるため、かみ砕いて服用してはいけません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
いわゆるゴーストピル、ゴーストタブレットと呼ばれる現象に関する記述です。徐放錠のコーティング部分が溶けずに便にそのまま排出される場合があります。有効成分はきちんと時間をかけて放出されて体内に吸収されています。従って「鎮痛効果が弱まる」わけではありません。特に対応は不要です。「薬剤を1回分服用」するよう指導するのは、不適切です。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
「処方2を追加服用」という記述について
「処方1の投与後に追加」・・・(1)なのか
「処方2を痛い時に使った場合において、さらに追加服用する場合」・・・(2)という意味か、判別できないと思われます。
(1)であれば、間隔を空ける必要はありません。
(2)であっても、30分程度様子を見て、あまり効果を感じないようであれば、追加する といった服用が妥当と考えられます。どちらにしても「5時間以上あけてください」という指導は不適切です。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4,5 は妥当です。
以上より、問316 の正解は 4,5 です。
問317
選択肢 1 ですが
家庭にある麻薬 だから、これを選びそうな記述です。「家庭麻薬」の定義をしっかりとおさえておきましょう。1 %以下のコデイン、ジヒドロコデイン(又はこれらの塩類を含有)が、家庭麻薬という分類です。非常に紛らわしいのですが家庭麻薬は、麻薬ではありません。
オキシコドンは麻薬です。従って、オキシコドンを「家庭麻薬」として管理するわけではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
麻薬といえば、かぎ必要 とだけ覚えていると、ひっかかる記述です。麻向法第 34 条より「麻薬取扱者は 所有・管理する麻薬を 業務所内、麻薬以外と区別(覚せい剤除く)し、堅固な設備内で施錠して保管」が義務です。患者は麻薬取扱者ではありません。従って、かぎのかかる堅固な保管庫での保管は必要ありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
届け出必要ありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
治療用の麻薬について、携帯して海外渡航する場合、厚生労働大臣、又は、厚生労働大臣から権限が委任されている 地方厚生(支)局長の許可が必要です。(106-77)。医師の許可があれば海外旅行に携帯できるわけではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
調剤済麻薬として、薬局が受け取り後、廃棄します。
以上より、問317 の正解は 5 です。
コメント