薬剤師国家試験 第107回 問288-289 過去問解説

　問 題　　　　　

28歳女性。病院で受付事務の仕事をしている。半年前から起床時の体のこわばりや、手足の関節の痛みを意識するようになった。

市販の鎮痛薬を飲んでいたが、徐々に増悪したため、近くの整形外科を受診したところ、関節リウマチと診断された。

メトトレキサートでの治療を開始したが、症状は改善しなかった。アダリムマブの自己注射を追加することになり、自己注射について薬剤師の指導を受けるように医師から言われ来局した。

患者の検査値等は以下のとおりである。

赤血球数 280×10⁴/μL、白血球数 8,000/μL、血小板数 12×10⁴/μL、CRP 2.8mg/dL、血清クレアチニン値 0.7mg/dL、HbA1c 5.2%(NGSP値)、胸部X線 異常なし。

問288

薬剤師が患者に行う指導として、適切なのはどれか。2つ選べ。

1. 注射後、発疹や呼吸困難が現れた場合は、すぐに医師の診察を受ける。
2. 注射部位は、大腿部、腹部又は上腕部を選び、毎回、同一の場所に打つ。
3. 微熱や咳が続くときには、すぐに医師の診察を受ける。
4. 風しんの罹患歴がない場合は、風しんワクチンをすみやかに接種するよう指導する。
5. メトトレキサートは毎日、決まった時刻に服用を続ける。

問289

アダリムマブの自己注射を開始後、関節リウマチの症状は軽快して、患者は大変喜んでいたが、約6ヶ月後、次第に湿性の咳と全身倦怠感が出現するようになった。

(検査値及び所見)

赤血球沈降速度 30mm/h(基準値3～15)、CRP 1.0mg/dL、HbA1c 5.4%(NGSP値)、インターフェロンガンマ遊離試験 陽性

この状況に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 関節リウマチの再燃が疑われる。
2. 糖尿病発症の可能性がある。
3. 結核感染が疑われる。
4. アバタセプトの併用を検討する必要がある。
5. アダリムマブの投与中止を検討する必要がある。

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

問288

選択肢 1 は妥当です。
アナフィラキシーショックの初期症状についての記述です。

選択肢 2 ですが
皮膚が硬くなってしまうことなどを避けるため、注射部位を毎回変えるように指導します。

選択肢 3 は妥当です。
免疫低下に伴う重大な感染症の可能性があるため、このような指導を行います。

選択肢 4 ですが
感染症発現リスクが否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと　とされています。風しんワクチンは生ワクチンの１つなので、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
リウマチに対してのメトトレキサートなので、週１、１～２日かけて服用です。（投与例　106-222223)。毎日ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、問 288 の正解は 1,3 です。

問289

湿性の咳、全身倦怠感から、選択肢から選ぶなら、結核感染が疑われます。放置できない状況であり、アダリムマブの投与中止が検討されます。

以上より、問 289 の正解は 3,5 です。

本問を機に、ぜひおさえておきたい検査がインターフェロンガンマ遊離試験（IGRA：Interferon – Gamma release assay) です。この試験は結核の感染診断試験です。結核菌感染歴があると、特異的抗原感作で IFN-γ を産生します。特異的抗原というのは、要するに特定のペプチドです。

本試験時点において、インターフェロンガンマ遊離試験は、具体的試験法として、クォンティフェロン（QTF）と、T-SPOT の２種類が知られています。（クォンティフェロンは既出 106-290291）。