問 題
図は、単量体で作用する酵素のヒト遺伝子構造を示したものである。5 つのエキソンを順に数字で表し、矢印 A、B は、頻度が高い 2 種類の遺伝子多型 A、B のそれぞれの位置を示す。
多型 A はプロモーター領域に、多型 B は翻訳領域に存在する。この遺伝子は常染色体上に存在し、多型 A のヘテロ接合体では、野生型ホモ接合体と比べて、この酵素の活性がほぼ半分になる。
多型 B のヘテロ接合体では、酵素活性が野生型ホモ接合体の約 3/4 になる。
この多型に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 多型 A は、この酵素の mRNA 量に影響する。
- 多型 B は、サイレント変異である。
- 多型 A ヘテロ接合体と多型 B ヘテロ接合体の夫婦からは、多型 A と多型 B を両方もつ子が生まれる可能性がある。
- 多型 B の遺伝子産物のアミノ酸配列は、野生型と同一である。
- 多型 B は、逆転写酵素を用い、第 2 エクソン内の配列に対する RT – PCR で判定できる。
解 説
選択肢 1 は妥当です。
プロモーター領域の変異だから、転写開始への影響であり、mRNA 量に影響すると考えられます。(ほぼ同趣旨 105-115 選択肢 2)
選択肢 2 ですが
サイレント変異とは、DNA の塩基配列が変わったけれど、指定するアミノ酸が同じため、できあがるタンパク質が同じような変異のことです。酵素活性が変化しており、サイレント変異ではないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
野生型の遺伝子を A、多型 を含む場合の遺伝子をそれぞれ A’、A” と表した場合において、「AA’ の父」と 「AA” の母」がいて、「父から A’、母から A” を受け取り A’A” になる」ということは、当然ありえます。
選択肢 4 ですが
エキソン部分の変異なので、アミノ酸配列を変える可能性が大きいです。その上、酵素活性が変化しており、野生型とアミノ酸配列が異なり、その結果タンパク質の立体構造が変化し、活性に違いが出ていると考えられます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
多型 B は 第1エクソン領域の塩基配列の違いなので、第2エクソン内の配列に対する RT-PCR ではなく、第1エクソン領域内の配列に対する RT – PCR で判定できます。選択肢 5 は誤りです。
ちなみに、そもそも リアルタイムPCR は
PCR による 核酸増速量が蛍光強度としてわかるだけ(参考例 106-113) だから、多型の判定なんてできるのか?という疑問があるかもしれません。ところがこれができるんです。塩基の違いを蛍光に反映させる仕組みにより、一塩基の違いも RT – PCR で判定できます。
以上より、正解は 1,3 です。
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