問 題
薬物 A に感受性のある培養細胞を用いて、その細胞内の代謝調節タンパク質 B について調べることにした。
操作の流れを図1に示す。培地に薬物Aを添加して細胞を1時間培養した後、培地を除去してから細胞を回収した。細胞を破砕し、低速度の遠心操作で核画分を分離回収した。さらに高速度の遠心操作で、核を除いた細胞の膜画分を分離回収した。
また、対照として、培地に薬物Aを添加しなかった細胞についても同様の操作を行った。
ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)にて、核画分及び膜画分中のタンパク質を分離し、タンパク質Bに対するポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロットを行った。
SDS-PAGEは、還元剤(2-メルカプトエタノール)を添加した条件と添加しない条件の2通りの方法で行ったところ、図2に示す結果を得た。
以上の実験とその結果から推測される記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- タンパク質Bは、核膜に局在するタンパク質である。
- タンパク質Bは、分子間ジスルフィド結合を持つ。
- タンパク質Bから生じた約30kDaのタンパク質は、核内に移行する。
- タンパク質Bは、薬物Aで刺激された細胞内で3つに切断される。
- タンパク質Bの分子量は、約50kDaである。
解 説
図1 さらっと書いていますが
クリーンベンチがある細胞培養室へ行き
培養後 電動ピペットで ギュイーンと培地捨てて、剥離液とかチューって入れて、顕微鏡で確認したら 「・・・ん? 何もいないぞ。。えっ、せんぱーい!」とかあわてたり、そのせいで今日の予定がすべてふっとんだり・・・など、いろんな悲しい(楽しい?)思い出が浮かぶ 生物系研究室の学生もいるのではないでしょうか。
図2ですが
SDSーPAGE で 分子量に基づき分離し、ポリクローナル抗体でウエスタンブロットしているので、要するに、タンパク質 B がバンドとして現れます。
図2 の薬物 A を添加していない レーン1とレーン2 に注目します。すると、タンパク質 B は膜画分に存在していることがわかります。また、還元剤を添加すると、2つに切断されているようです。還元剤添加で切断 ということから S-S 結合(ジスルフィド結合)の存在が示唆されます。(1)
還元剤を添加していない、図2のレーン3,4より、薬物 A を添加すると、核画分にタンパク質 B が存在しています。これは核画分への移行を推測できる結果です。(2)。((1),(2)について イメージは下図)。
このため、薬物 A を添加し、還元剤も投与した場合
レーン3に 30kDa、レーン4に 20kDa,50kDa という結果となると考えられます。このイメージにもとづき、各選択肢を検討します。
選択肢 1 ですが
タンパク質 B は 膜の局在すると考えられます。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は妥当です。
選択肢 4 ですが
薬物 A で刺激され 2つに切断されると考えられます。3つではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
タンパク質 B の分子量は 100 kDa と推測されます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
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