問 題
次の反応のうち、主生成物の構造を正しく示しているのはどれか。1つ選べ。ただし、各反応はそれぞれ適切な溶媒を用いて行い、反応終了後、適切な後処理を施したものとする。
解 説
本問は、芳香族化合物の配向性に関する出題です。
o,p配向性を示す置換基には、-NH2、-OH、-OR、-NHCOR、-R、-X などがあります(Rはアルキル基、Xはハロゲンを指します)。
一方、m配向性には、-NO2、-CN、-CHO、-COR、-COOH、-COOR などがあります。
以上を踏まえて選択肢を見ていきます。
1にある基質の置換基は「-NHCOR」なので、o,p配向性を示します。しかし、1の生成物を見るとm位に付加しているため、これは不適当です。
2にある基質の置換基は「-R」なので、o,p配向性を示します。しかし、2の生成物を見るとm位に付加しているため、これも不適当です。
3にある基質の置換基は「-COR」なので、m配向性を示します。しかし、3の生成物を見るとo位またはp位に付加しているため、これも不適当です。
4にある基質の置換基は「-OH」と「-R」で、どちらもo,p配向性を示します。しかし、両者を比較すると「-OH」のほうが強い配向性を持ちます。
これは、ベンゼンに直接結合しているO原子が非共有電子対を持つため、下図のような共鳴効果によって芳香環の電子密度が高まり、反応性が上がるからです。より詳しい説明が必要な場合には、反応性・配向性に及ぼす置換基の効果のページを参照してください。
よって、選択肢4の反応は「-OH」にとってのo位またはp位に付加するはずですが、4の生成物を見るとm位に付加しているため、これも不適当です。
5にある基質の置換基は「-X」なので、o,p配向性を示します。5の生成物を見るとo位またはp位に付加しているため、これは正しいです。
以上から、正解は5となります。
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