問 題
62歳男性。妻と死別し独居である。認知症があり、介護保険制度による要支援2のサービスを受けている。前回の処方からドネペジル塩酸塩が5mgから10mgに増量になった。
薬剤師が医師の指示により患者宅を訪問したところ、患者から最近尿が出にくく、吐き気があると訴えがあった。また、3日前から風邪気味のため、市販薬であるA顆粒を服用していることがわかった。
問322
この薬剤師の薬学的介入に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- ドネペジル塩酸塩の増量により、吐き気が発現している可能性があるので、処方医と対応を検討する。
- プロメタジンメチレンジサリチル酸塩の抗コリン作用による排尿障害が疑われるので、この患者にA顆粒の服用を中止するよう指導する。
- アセトアミノフェンはドネペジル塩酸塩との併用禁忌薬なので、この患者にA顆粒の服用を中止するよう指導する。
- ドネペジル塩酸塩の作用が増強されるおそれがあるので、A顆粒服用中は、ドネペジル塩酸塩を5mgに戻すよう処方医に提案する。
- 無水カフェインによる排尿障害が疑われるので、この患者にA顆粒の服用を中止するよう指導する。
問323
介護保険制度に照らしたこの患者に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- この患者は第2号被保険者である。
- 薬局において居宅療養管理指導料を算定する。
- 薬局において在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する。
- この患者は介護給付を受けることができる。
- この患者の介護保険料は、医療保険料に上乗せして保険者が一括徴収する。
正解.
問322:1, 2
問323:1, 5
解 説
問322
選択肢 1 は妥当な記述です。
制吐剤として抗コリン薬が用いられることから考えて、ドネペジルによりアセチルコリンエステラーゼ阻害→コリン作用増強で吐き気というのは覚えていなくても推測できるのではないでしょうか。
選択肢 2 は妥当な記述です。
選択肢 3 ですが
アセトアミノフェンとドネペジルは、併用禁忌ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
プロメタジンが抗ヒスタミン薬で、抗コリン作用も有します。そのため、ドネペジル塩酸塩の作用「減弱」のおそれと考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
無水カフェインは「利尿」作用を有します。「排尿障害」の疑いはないと考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,2 です。
問323
選択肢 1 は妥当な記述です。
第2号被保険者とは、40~64歳の医療保険加入者のことです。(102-146)
選択肢 2 ですが
居宅療養管理指導を受けられるのは、要介護 1~5 に認定されている 65 歳以上の高齢者です。要支援1~2を受けている人は、介護予防居宅療養管理指導が適用されます。
65歳未満でサービスの利用対象に含まれるのは、介護保険に加入している 40歳 ~ 64歳で、パーキンソン病、関節リウマチ、末期がんなど 16 種類の特定疾病のいずれかにより、要介護認定を受けた人のみです。特定疾病に「認知症」は含まれません。また、この患者は「要支援」なので、誤りです。
選択肢 3 ですが
在宅患者訪問薬剤管理指導料は、医療保険制度のサービスです。要介護や要支援判定を受けると、原則介護保険が優先されます。よって、「在宅患者訪問薬剤管理指導料」ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
第2号被保険者は、加齢に伴う疾病(特定疾病)が原因で、要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。認知症は特定疾病ではないため、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当な記述です。
以上より、正解は 1,5 です。
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