問 題
73歳男性。胃全摘出術後4日目に発熱があり、CRPも上昇していた。胸部単純レントゲン写真で右下肺野に浸潤影を認め、喀痰培養の結果にてMRSAが検出されたため、バンコマイシンの投与を開始した。
7日間投与したが効果が得られなかったため、病棟担当薬剤師に薬剤の変更について医師から相談があり、作用機序の異なるリネゾリドの静脈内投与を提案した。
検査値:体温 38.1℃、CRP 5.8mg/L、Ccr 44.5mL/min、赤血球数 420×104/μL、白血球数 4,000/μL、血小板数 25×104/μL
問264
リネゾリドの作用機序はどれか。1つ選べ。
- 細菌内で還元されたニトロ化物が細菌のDNAを切断する。
- 細菌の細胞壁合成の初期段階でN-アセチルムラミン酸の合成を阻害する。
- 細菌のDNAジャイレースに作用し、DNAの高次構造形成を阻害する。
- 細菌のペニシリン結合タンパク質に共有結合する。
- 細菌のリボソームと結合し、翻訳過程の70S開始複合体の形成を阻害する。
問265
リネゾリドをこの患者に使用する上での留意点として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 投与終了1~2時間後の血中濃度を測定する必要がある。
- 効果不十分な場合は、点滴静注時間を15分に短くすることで効果を高めることができる。
- 中等度腎障害のため、減量して投与する。
- 骨髄抑制を起こすことがあるので、定期的に血液検査を行う。
- 経口投与が可能な状態になったら、経口剤への切り替えを提案する。
正解.
問264:5
問265:4, 5
解 説
問264
リネゾリドは、オキサゾリジノン系合成抗菌剤です。バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対して抗菌力を有します。
リネゾリドの作用機序は,細菌のリボソームにおけるタンパク合成阻害です。リネゾリドはリボソームにおける30S-mRNA,50S リボソーム,及び fMet-tRNA によって構成される70S 開始複合体形成を阻害することによって細菌の増殖を阻害します。
以上より、正解は 5 です。
問265
選択肢 1,3 ですが
リネゾリドは、中程度までの肝機能障害 及び 程度によらず腎機能障害による薬物動態の変化は認められず、TDM や投与量の調節が不要と判断されています。
選択肢 2 ですが
このような用法で用いることはありません。
選択肢 4,5 は妥当な記述です。
リネゾリドの骨髄抑制作用について、週1回程度の定期的血液検査を行ってモニタリングします。他にも、まれに代謝性アシドーシス、低 Na 血症、偽膜性大腸炎などが知られており、注意が必要です。
以上より、正解は 4,5 です。
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