問 題
75歳女性。肝臓がんの疑いで外来通院中。今回、超音波検査で結節性病変を認めたため、精査目的で入院し、造影剤を用いた画像検査を行うことになった。
ヨード造影剤にアレルギーがあるため、新しく採用となった超常磁性酸化鉄製剤であるフェルカルボトラン(注)を用いて画像を撮影することになった。図は肝臓におけるフェルカルボトラン投与前後の画像を模式的に示す。
(注) フェルカルボトラン：細粒子化した酸化鉄(Fe2O3)をデキストランやその誘導体などでコーティングしてコロイド化したもの。
肝臓における作用機序：本剤は投与後、肝臓内ではクッパー細胞に取り込まれ、色の濃い画像が得られる。肝腫瘍組織ではクッパー細胞が欠如しているため、色の薄い画像が得られる。図中では、信号強度の強い方が黒く表されている。
問200
この患者を担当する研修医から、薬剤部のDI(医薬品情報)担当者に、この薬剤についての質問があった。DI担当者の説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- ヘモクロマトーシス等の鉄過剰症の患者には禁忌である。
- メトホルミンなどビグアナイド系薬剤と併用禁忌である。
- MRI(magnetic resonance imaging)において使用する薬剤である。
- 腎機能が低下している患者には使用できない。
- ショックやアナフィラキシーは起きない。
問201
この患者に行った画像検査法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 酸化鉄(Fe2O3)の代わりに、酸化マグネシウム(MgO)を用いることも可能である。
- 波長1～10pmの電磁波が使用される。
- ドップラー効果により臓器の運動を観察することも可能である。
- 高磁場中でラーモア歳差運動の周波数と同じ周波数の電磁波を照射し、原子核を励起させる。
- 放射線被ばくに注意する必要はない。
正解．
問200：1, 3
問201：4, 5
解 説
問200
フェルカルボトラン（リゾビスト）は MRI 用肝臓造影剤です。投与後速やかに主として肝のクッパー細胞に取り込まれ，組織中のプロトン横緩和時間（T2）を短縮し、コントラスト増強効果を発揮します。
鉄剤なので、鉄過剰症の患者には使用禁忌です。
以上より、正解は 1,3 です。
問201
選択肢 1 ですが
マグネシウムは非磁性体です。従って MRI では用いられないと考えられます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
MRI で用いるのは「ラジオ波」です。電磁波の中でも波長が長い波です。「pm」のオーダーではないだろうと考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
ドップラー効果で観察するのは、超音波を使ったエコー検査と考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。（102-197)
選択肢 4,5 は妥当な記述です。
以上より、正解は 4,5 です。
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