薬剤師国家試験 第105回 問176 過去問解説

 問 題     

ある薬物10mgを被験者に急速静脈内投与した後、薬物の血中濃度及び尿中排泄量を測定したところ、血中濃度時間曲線下面積は0.20mg・h/L、尿中総排泄量は2.0mgであった。一方、この薬物40mgを同一被検者に経口投与したときの尿中総排泄量は3.0mgであった。

この薬物40mgを経口投与したときの体内動態の説明として、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、この薬物は肝代謝及び腎排泄でのみ消失し、体内動態は線形性を示す。また、肝血流速度は80L/hとする。

  1. 全身クリアランスは50L/hである。
  2. 肝クリアランスは10L/hである。
  3. 肝抽出率は63%である。
  4. 体循環に移行する薬物量は15mgである。
  5. 門脈に移行する割合は90%である。

 

 

 

 

 

正解.1, 4

 解 説     

静注に注目します。
AUC と D が与えられているので CL = D/AUC を思い出します。これにより CL = 10mg/0.2 mg・h/L なので 50 L/h とわかります。選択肢 1 が正しい記述です。

また
尿中総排泄量に注目すると、尿中総排泄量が 2.0 mg → 3.0 mg と 1.5 倍になっています。ということは、40mg の経口投与により「15mg 静注」したのと同じことになっているとわかります。つまり、経口投与 40mg → 吸収で減って、初回通過効果受けて体循環へ入るのが 15mg ということです。選択肢 4 は正しい記述です。

ちなみに
選択肢 2 について
全身クリアランス 50 で、10mg 投与のうち 2.0mg が腎排出されているので、肝クリアランスが 40、腎クリアランスが 10 と考えられます。

選択肢 3,5 ですが
肝抽出率(Eh)が、CLh/Qh です。100-170) 今回使わなくても正解は選べますが、絶対思い出したい知識です。すると 肝クリアランスが 40、Qh が 80 なので、肝抽出率は 50% です。

つまり、経口投与で 40mg → 消化管吸収である程度減る → 肝初回通過効果により 50% になった結果が 15mg とわかります。すると消化管吸収で 40mg → 30mg になります。よって、これは言い換えれば門脈移行率なので、門脈に移行する割合は 75% です。

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