問 題
化合物Aの反応に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- SO3が求電子剤として作用する置換反応である。
- アの部分は共鳴効果による電子求引性を示す。
- アの部分は誘起効果による電子供与性を示す。
- アの部分のかさ高さのため、オルト置換体が得られにくい。
- Aの代わりにベンゼンを基質とすると反応は遅くなる。
解 説
硝酸と硫酸、そして芳香環の3つの間で起こる反応といえば、求電子置換反応である「ニトロ化」です。
まずは硫酸のH+が硝酸からOH-を奪って水となることで、硝酸がニトロニウムイオン(NO2+)に変わります。そして、このカチオンが芳香環に対して求電子攻撃することで芳香環に付いた-Hが-NO2基に置き換わり、ニトロ化が完了します。
基質が単純なベンゼンではなく、今回のように置換基の付いた芳香族化合物である場合、その置換基がo,p配向性を示すものならo位やp位がニトロ化され、置換基がm配向性を示すものならm位がニトロ化されます。
以上を踏まえて選択肢をみていきます。
選択肢 1 について、求電子剤は硫酸由来のSO3ではなく、硝酸由来のニトロニウムイオン(NO2+)です。よって、これは誤りです。
選択肢 2 について、アの部分の中で芳香環に直結しているN原子は、非共有電子対を持っています。そのため電子が豊富なので、芳香環側に電子を流すことができます。よって、共鳴効果による「電子供与性」を示すので、「電子求引性」とするのは誤りです。
選択肢 3 は選択肢 2 とは反対で、誘起効果による「電子供与性」というのが誤りで、ここは「電子求引性」とすると正しい文章になります。
誘起効果で電子供与性になるかは電子求引性になるかは電気陰性度によって決まります。今回も注目する箇所は芳香環に直結しているN原子で、Nは電気陰性度が大きいので、誘起効果としては電子求引性を持つことになります。
選択肢 4 は正しい記述です。アの部分はo,p配向性示しますが、アの部分が大きすぎて求電子剤が近づきにくいです。そのため、この反応ではオルト置換体が得られにくく、パラ置換体が生成しやすくなります。
選択肢 5 も正しい記述です。置換基には、芳香環の求電子置換反応を促進させる活性基と、抑制させる不活性基とがあります。o,p配向性の置換基のうち、ハロゲン以外のものは全て活性基となるので、アの置換基も活性基となります。
よって、アの置換基のおかげで化合物Aの反応は早くなっているので、Aの代わりにベンゼンを基質とすると反応は遅くなります。
以上より、正解は 4 と 5 です。
コメント