薬剤師国家試験 第104回 問274-275 過去問解説

　問 題　　　　　

70歳男性。切除不能な胃がんの治療のため、S−1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)/シスプラチン療法を施行している。数日前から右下肢に痙れん様のふるえが認められている。

精密検査の結果、左脳にがん転移が認められ、緊急入院となった。痙れん発作の予防としてフェニトインの服用を開始した。

問274

薬剤師が本患者のがん治療においてモニタリングをすべき項目として、最も優先度が低いのはどれか。1つ選べ。

1. テガフールの累積投与量
2. フェニトインの血中濃度の上昇
3. S−1/シスプラチンによる骨髄抑制
4. S−1/シスプラチンによる嘔吐
5. シスプラチンによる腎毒性

問275

同一処方でさらに1週間継続服用したところ、せん妄様症状が認められ、その時のフェニトイン血中濃度は50μg/mLであった。この患者の定常状態におけるフェニトインの平均血中濃度を16μg/mLとしたい。1日あたりの投与量(mg)として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

ただし、測定したフェニトイン濃度は定常状態における平均血中濃度であるものとし、フェニトインの体内からの消失速度はMichaelis−Menten式で表され、Michaelis定数を4μg/mL、バイオアベイラビリティを100%とする。なお、S−1/シスプラチン療法は今後も同じ用法・用量で継続するものとする。

1. 100
2. 140
3. 180
4. 220
5. 260

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

問274

選択肢 1 ですが
特に「累積投与量」についてモニタリングの必要はないと考えられます。「累積投与量」について注意が必要な抗がん剤としては、アントラサイクリン系があげられます。代表例はドキソルビシンです。上限量を超えると心毒性が高い割合で発現します。

選択肢 2 ですが
フェニトインの血中濃度は TDM 対象であり、注意が必要な項目と考えられます。

選択肢 3~5 ですが
重篤な副作用であり、注意が必要な項目と考えられます。

以上より、問274 の正解は 1 です。

問275

ミカエリスメンテン式 v = Vmax ・［S］/（ Km ＋［S］）は、基礎知識です。定常状態においては、投与量＝消失速度 v と考えられます。

フェニトインは 1日 300mg 投与です。よって、左辺の v = 300mg/day です。［S］は基質濃度＝薬物濃度なので、50 です。単位の 重量部分を、投与量と合わせて「mg」にするために 「ug/mL = mg/L」 とします。Km = 4mg/L です。代入すれば、Vmax を求めることができます。

求めたい投与量＝消失速度を v’ とします。求められた Vmax を使い、今度は［S］＝ 16 とすることで、v’ を求めることができます。

選択肢より選べば、問275 の正解は 5 です。