薬剤師国家試験 第103回 問262-265 過去問解説

 問 題     

78歳女性。関節リウマチのためメトトレキサートを服用中。病棟での薬剤管理指導の面談で、最近疲れやすく、口内炎がひどいとの訴えがあった。

検査データ:AST 90U/L、ALT 75U/L、MCV 105fL、白血球数 1,300/μL、血小板数 30,000/μL

問262

医師に対して、この患者への投与を提案する薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. ホリナートカルシウム錠
  2. トファシチニブクエン酸塩錠
  3. デキサメタゾン錠
  4. エポエチンアルファ(遺伝子組換え)注射液
  5. タクロリムス水和物カプセル

問263

前問で適切と考えられた薬物の作用機序として正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. カルシニューリンを阻害し、インターロイキンなどのサイトカイン産生を抑制する。
  2. 細胞内に取り込まれて活性型葉酸となり、核酸合成を再開させる。
  3. 赤芽球前駆細胞に作用し、赤血球への分化増殖を促進する。
  4. ヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害し、免疫反応を抑制する。
  5. 細胞内のグルココルチコイド受容体と複合体を形成し、抗炎症作用を示す。

問264

その後、発熱、乾性咳嗽、息切れがあるとの訴えがあり、検査の結果、メトトレキサートが原因の間質性肺炎が疑われた。医師に対して、この患者への投与を提案する薬剤として最も適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. ピルフェニドン錠
  2. テルブタリン硫酸塩錠
  3. インフリキシマブ(遺伝子組換え)点滴静注
  4. デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物錠
  5. プレドニゾロン錠

問265

前問で適切と考えられた薬物の薬理作用として正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. TNF-α(腫瘍壊死因子-α)を捕捉する。
  2. 咳中枢に作用して咳嗽反射閾値を上昇させる。
  3. 気管支平滑筋のGタンパク共役型受容体を刺激する。
  4. 細胞質において受容体と結合し、この複合体が核内へ移行した後に転写活性を変化させる。
  5. TGF-β(トランスフォーミング増殖因子-β)を捕捉する。

 

 

 

 

 

正解.
問262:1
問263:2
問264:5
問265:4

 解 説     

問262

問263 とあわせて解説します。

問263

メトトレキサートは、葉酸代謝拮抗機序をもつ免疫抑制剤です。ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害薬です。葉酸(フォリアミン など)がメトトレキサート(MTX)の副作用予防のため用いられます。

従って、問262 の正解は 1 です。
問263 の正解は 2 です。

ちなみに、問262 選択肢 2 のトファシチニブ(ゼルヤンツ)の作用機序が、問263 選択肢 4 のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害です。

以下、問262 選択肢 3 デキサメタゾンと対応するのが、問263 選択肢 5 です。
問262 選択肢 4 エポエチンアルファが対応するのが、問263 選択肢 3 です。
問262 選択肢 5 タクロリムスが対応するのが、問263 選択肢 1 です。

問264

問265 とあわせて解説します。

問265

間質性肺炎には、ステロイドが用いられます。

ピルフェニドンは、特発性肺線維症等の治療に用いられる抗線維化薬です。間質性肺炎に用いる薬剤ではありません。

テルブタリンは β受容体刺激薬です。喘息に用いられます。間質性肺炎に用いる薬剤ではありません。

インフリキシマブは、遺伝子組み換え抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体です。関節リウマチ治療薬です。間質性肺炎に用いる薬剤ではありません。 

デキストロメトルファンは、非麻薬性中枢性鎮咳薬です。間質性肺炎に用いる薬剤ではありません。 

プレドニゾロンは、ステロイドです。細胞膜を通過して細胞質内に入り核内受容体などと結合することで、遺伝子活性化を引き起こし、作用を発揮します。

以上より、問264 の正解は 5 です。
問265 の正解は 4 です。

ちなみに、問264 選択肢 1 のピルフェニドンの主な作用機序が問265 選択肢 5 です。

以下、問264 選択肢 2 テルブタリンと対応するのが問265 選択肢 3 です。
問264 選択肢 3 インフリキシマブが対応するのが、問265 選択肢 1 です。
問264 選択肢 4 デキストロメトルファンが対応するのが、問265 選択肢 2 です。

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