問 題
38歳女性。肝内胆管がんと診断され、肝臓を部分切除した。患者は術後の回復期にあり、食事を経口的に摂取しはじめ、高カロリー輸液療法の離脱を目指している。また、肝性浮腫と痰のからみがあるため、図のような注射剤が投与されている。
問198
患者はてんかんの内服薬を常用していたが、術後内服ができないため、フェニトインナトリウム注射液を1日1回投与しなければならない。以下の投与経路のうち、適切なのはどれか。1つ選べ。
- Aのラインを止め、Eから生理食塩液10mL程度を管注(I.V.Push)した後に投与する。
- Bのラインを止め、Eから管注(I.V.Push)する。
- Cのラインを止め、Dから生理食塩液10mL程度を管注(I.V.Push)した後に投与する。
- Cに混和して投与する。
- 注射用カンレノ酸カリウムと混和してDから管注(I.V.Push)する。
問199
フェニトインは治療薬物モニタリング(TDM)対象薬であることから、イムノアッセイによる血中薬物濃度測定を行った。イムノアッセイに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- フェニトインなどの低分子は、サンドイッチ法により測定される。
- モノクローナル抗体は、一般にポリクローナル抗体に比べて交差反応性が大きい。
- 化学発光イムノアッセイでは、標識物質に励起光を照射することで生じる発光を測定する。
- 免疫比濁法では、免疫複合体の形成により粒子が凝集する性質を利用している。
- ELISAでは、抗原あるいは抗体を固定化した固相が用いられる。
正解.
問198:3
問199:4, 5
解 説
問198
フェニトインナトリウムが強アルカリ性で、pH が低下すると結晶が析出してしまう薬剤です。配合変化を起こしやすい代表的薬剤として憶えておくとよいです。
ラインを止めると液はもう流れてこなくなります。また、生食でフラッシュすることでラインに残っていた薬液が体内に押し流されてラインに残留していた薬液はなくなります。以上をふまえ、各選択肢を検討します。
選択肢 1 ですが
A を止めて、Eから生食でフラッシュ後投与しています。従って B は流れ続けています。よって、この方法では、B と E が混合します。pH 低下により、結晶析出のおそれがあると考えられます。
選択肢 2 ですが
B を止めて、Eから投与しています。従ってA は流れ続けています。(フラッシュはしていませんが、A によって、ラインに残留する B は体内へ押し流されます。)よって、この方法では A と E が混合します。ブロムヘキシン塩酸塩 とあるように塩酸塩なので、混合すると pH 低下により、結晶析出のおそれがあると考えられます。
選択肢 3 は、適切な記述です。
C を止め、フラッシュしているため、ルートに残留する薬剤がありません。
選択肢 4 ですが
混和によりpH 低下して、結晶析出のおそれがあります。
選択肢 5 ですが
注射用カンレノ酸カリウムは塩基性薬剤です。しかし、フラッシュしていないため、ラインに残留した C と混合します。その結果混和により pH 低下して、結晶析出のおそれがあると考えられます。
以上より、正解は 3 です。
問199
選択肢 1 ですが
サンドイッチ法は、始めに床に抗体を敷き詰めてターゲットをキャッチし、もう一つ別の抗体をターゲットにくっつけることで 2 種類の抗体でサンドイッチして測定する方法です。抗体が反応できる場所(エピトープ)が2つ以上あるような、ある程度以上の分子量がある物質に対して用いる方法です。
選択肢 2 ですが
モノクローナルと、ポリクローナル抗体の違いは、同じ抗原に対する抗体であるが、モノクローナルは単一の抗体です。ポリクローナルは同じ抗原であっても、複数の場所(エピトープ)に対応する数種類の抗体の混合物です。
そして、交差反応性とは、抗体が反応すべきターゲットと類似した異なる抗原と反応する性質のことです。従って、交差反応性は、単一のエピトープに対する抗体しか存在しないモノクローナル抗体の方が、一般に小さくなります。
選択肢 3 ですが
化学発光イムノアッセイは、発光化合物を標識として抗体に結合しておいたり、酵素をあらかじめ抗体に結合させた上で、酵素と反応する基質(反応して光を発するもの)を投入することで生じる発光を測定します。励起光を照射して発光を測定するのは蛍光免疫測定法です。
選択肢 4,5 は、正しい選択肢です。
ちなみに、免疫比濁法とは、濁度の違いを利用した測定法です。具体的には、ターゲットを抗体と反応させることで吸光度が変わることを利用した測定法です。
以上より、正解は 4,5 です。
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