問 題
化学物質の遺伝毒性試験に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- Ames 試験は、化学物質の遺伝毒性を Salmonella Typhimurium 変異株の復帰突然変異の出現頻度により検出する方法である。
- Ames 試験で用いる細菌は、ヒトや動物の組織と同様の異物代謝反応を起こす変異株である。
- 化学物質による染色体切断後の修復の度合いを観察する試験として、特定の細菌を用いたコメットアッセイがある。
- ほ乳動物細胞を用いた in vitro 小核試験では、細胞分裂が阻害されて生じる小核を検出する。
- 遺伝毒性の有無は、Ames 試験に加え、げっ歯類又はほ乳動物細胞を用いた試験を組み合せて評価される。
正解.1, 5
解 説
Ames 試験は、変異原性試験の一種です。サルモネラ属の一種である、ネズミチフス菌を用います。この試験に用いる菌は、ヒスチジンという分子を合成できない株です。そのため、育てる培地にヒスチジンがないと増殖できません。
この菌を、確認する物質を加えて育てます。すると、変異原性がある物質の場合、菌が突然変異を起こし、ヒスチジン合成能を手に入れてヒスチジンなしの培地で育つようになります。
つまり、肉眼で菌のコロニーが確認できたら、加えた物質には変異原性がある ということがわかる試験です。
選択肢 1 は、正しい記述です。
選択肢 2 ですが
Ames 試験に使う変異株は、哺乳動物で見られる代謝機能を持たないものです。このような株を使っているため、試験において、S9 分画(ヒトの肝臓をすりつぶしたもの)を追加することで試験物質の変異原性発現に代謝活性化が必要かどうかを調べることができます。
選択肢 3 ですが
コメットアッセイは、DNA 障害性を、「単細胞」ゲル電気泳動法により検出する試験です。「特定の細菌」ではありません。
選択肢 4 ですが
小核とは、比較的小さい細胞核のことです。細胞分裂の時に、染色体の一部がうまく分配されずにちょろっと残ると、そこにも小さな核ができます。従って、細胞分裂が阻害されているわけではありません。
選択肢 5 は、正しい記述です。
以上より、正解は 1,5 です。
コメント