問 題
55歳女性。3日前から腹部膨満感と嘔気があり、昨日からの腹痛と間欠的な嘔吐のため受診した。診察の結果、血圧 98/62mmHg、脈拍 104/分、尿量低下、Na+ 130mEq/L、K+ 3.5mEq/L、Cl– 90mEq/Lであり、細胞外液減少を認めた。
この患者に投与する輸液の組成として適切なのはどれか。1つ選べ。
解 説
輸液についてざっくりとまとめると以下のようになります。
輸液は大きく
「等張性輸液と、低張性輸液」に二分されます。
等張性の代表例が
生理食塩水、5%ブドウ糖液 の2つです。この2つの違いは、輸液した時の分布です。すなわち生理食塩水は、「細胞外のみに分布」。(細胞内と、濃度が同じだから浸透圧による移動がない。)5%ブドウ糖液は、体内でブドウ糖がすぐに代謝されて水になり「全身に水が分布」です。また、生理食塩水にK+、Ca2+ を加えることで、より細胞外液に近い組成にしたものがリンゲル液です。具体例として、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液があります。
低張性の輸液は
生理食塩水と5%ブドウ糖液を混ぜて作ります。低張性輸液とは、1号~4号 がある方です。
1号 → 開始液。生食:5%ブドウ糖=1:1
病態不明時使う、みたいなイメージ。高 K 避けるために「K+が入っていない」のが特徴。
2号 → 脱水補給液。生食:5%ブドウ糖=1:2
1号に K+を加えたもの、というイメージ。低張性脱水に用いる。低張性脱水 = 水分よりも、電解質の欠乏が顕著な状態。発熱・嘔吐で、水も電解質も失った場合に水のがぶ飲みで、容易に陥りうる。
3号→維持液。生食:5%ブドウ糖=1:3
いいペースでこれを入れてると必要な水分、電解質が補充できる液。
4号→術後等。生食:5%ブドウ糖=1:4
K は、なし。
本問の患者は「細胞外液減少」とわかっているので「等張性」の輸液 を投与すべきと考えられます。また「細胞外液の減少を認めた」 とあるため、等張性の輸液として生理食塩水がより適切です。以上をふまえ、各選択肢を検討します。
選択肢 1 ですが
組成より、5% ブドウ糖です。生理食塩水の方がより適切と考えられます。
選択肢 2 ~ 4 ですが
Na++、Clー の値に注目すれば、明らかに低張性と考えられます。
選択肢 5 は
乳酸リンゲル液です。
以上より、正解は 5 です。
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