問 題
67歳男性。16年前にHIV感染が判明し、ジドブジン(ZDV)とラミブジン(3TC)による治療を開始したが、7年前から服薬を自己中断していた。6年前の結核罹患を契機にロピナビル・リトナビル(LPV・RTV)配合剤を追加して治療を再開したが、その2年後から再び服薬を自己中断していた。
全身倦怠感が徐々に進行し、血液検査(CD4陽性リンパ球、HIV-RNA定量)の結果、3TC・アバカビル硫酸塩配合剤とLPV・RTVによる治療を開始することになった。
問298
本症例と治療薬について適切なのはどれか。2つ選べ。
- 3TCは単独投与しても薬剤耐性を起こさない。
- 結核罹患の一因として、服薬の自己中断が考えられる。
- 全身倦怠感の悪化は、典型的なZDVの副作用である。
- 無症候性となった場合、血液検査の必要はない。
- 肝機能が低下した場合、配合剤ではなく個々の薬剤の投与を考慮する。
問299
HIV感染症について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 母乳を介した感染はしない。
- 無症候期は、感染後、数週間である。
- 一過性のインフルエンザ様症状が感染初期(感染後数週間)に起こる。
- 進行した場合、CD4陽性リンパ球数が減少する。
- 日和見感染が、感染初期に起こる。
正解.
問298:2, 5
問299:3, 4
解 説
問298
HIV は、変異が多く薬剤耐性を持ちやすいウイルスです。多剤併用によりウイルスの増殖を抑制することで予後が大きく改善しました。
選択肢 1 ですが
単独投与で、薬剤耐性が生じないということはありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
服薬の自己中断によりウイルスが増殖し、免疫が弱まり結核に感染した、という可能性が一因として考えられます。
選択肢 3 ですが
HIV 感染後、AIDs 発症前には発熱や倦怠感がつづいたりといった、エイズ関連症候群 と呼ばれる症状が見られます。全身倦怠感の悪化もエイズ関連症候群の一つである可能性が考えられます。一方で、ZDV には、重篤な肝障害の副作用がまれにあり全身倦怠感が、副作用の初期症状とも考えられます。これらの可能性を考えると「典型的 ZDV の副作用」とはいえないと考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
無症候性となっても、血液検査の値に注目し治療方針を決定していく必要があります。無症候性でも、薬に抵抗性が生じウイルスの増殖が進行していることもあるからです。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい選択肢です。
以上より、正解は 2,5 です。
問299
選択肢 1 ですが
母乳感染が知られています。そのため、キャリアである母は断乳します。
選択肢 2 ですが
数年間に至るときもあります。
選択肢 3 は、正しい選択肢です。
とはいえ、この症状では、HIV 感染と自覚しないことが多いです。
選択肢 4 は、正しい選択肢です。
選択肢 5 ですが
感染してからかなりの時間が経ってようやく免疫力が弱ってきます。その結果、日和見感染がおきます。よって、感染初期では、ありません。選択肢 5 は、誤りです。
以上より、正解は 3,4 です。
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