問 題
61歳女性。閉経している。針生検病理診断の結果、ER(エストロゲンレセプター)陽性、PR(プロゲステロンレセプター)陽性、HER2陰性の浸潤性乳管がんと診断され、乳房温存手術が施行された。術後の放射線療法に加え、薬物療法が開始された。
問294
この患者の術後薬物療法に用いられる薬剤として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- アナストロゾール
- ビカルタミド
- リュープロレリン酢酸塩
- タモキシフェンクエン酸塩
- トラスツズマブ
問295
術後2年経過時に、高カルシウム血症や脊髄圧迫症候など骨転移にともなう合併症状が現れた。
骨転移や、その合併症状に対して用いられる薬剤はどれか。2つ選べ。
- オマリズマブ
- メナテトレノン
- ゾレドロン酸水和物
- デノスマブ
- ラロキシフェン塩酸塩
正解.
問294:1, 4
問295:3, 4
解 説
問294
選択肢 1 は、正しい選択肢です。
アナストロゾール(アリミデックス)は、アロマターゼ阻害剤です。閉経後乳がんに用いられます。女性ホルモン受容体が陽性の場合に優先される治療薬です。
選択肢 2 ですが
ビカルタミド(カソデックス)は、抗アンドロゲン(男性ホルモン)薬です。前立腺がんに用いられます。乳がんには、用いられません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
リュープロレリンは、Gn – RH (ゴナドトロピン 放出ホルモン) のアゴニストです。結果的には、性ホルモン欠乏に導く薬です。女性に投与すると強制的に閉経状態を作ると理解しておけばよいです。前立腺がんなどに用いられます。乳がんにも用いられますが適応は 「閉経前」 乳がんです。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい選択肢です。
閉経前、閉経後を問わず、女性ホルモン受容体陽性の場合に乳がん治療薬として用いられます。
選択肢 5 ですが
トラスツズマブ(ハーセプチン)は、HER2 タンパク質を標的とする分子標的薬です。乳がんや胃がんに用いられます。本問では、HER2 陰性なので用いられません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,4 です。
問295
乳がんは、前立腺がんや肺がんと並び骨転移が多いがんです。骨転移の結果、破骨細胞の活性化などがおきます。 薬剤としては、ゾレドロン酸やデノスマブ(プラリア)が用いられます。
選択肢 1 ですが
オマリズマブ(ゾレア)は、難治性喘息治療薬です。ヒト化 ヒト IgE モノクローナル抗体です。炎症細胞の活性化を抑制します。乳がんの骨転移には、用いられません。
選択肢 2 ですが
メナテトレノンは、骨粗鬆薬です。ビタミン K 製剤です。骨量、痛みの改善に用います。乳がんの骨転移には、用いられません。
選択肢 3,4 は、正しい選択肢です。
ゾレドロン酸は、ビスホスホネート剤の 1 つです。破骨細胞の活動を阻害し骨吸収を抑制します。注射剤です。悪性腫瘍に合併する、高 Ca 血症 に用いられます。
デノスマブは、RANKL という破骨細胞の形成、機能などを調節するタンパク質を標的としたモノクローナル抗体です。がん細胞の骨転移により RANKL 産生が亢進します。この RANKL を抑制することにより骨吸収を抑制します。
選択肢 5 ですが
ラロキシフェン(エビスタ)は、SERM です。選択的エストロゲン受容体調節薬です。閉経後骨粗しょう症に用いられます。乳がんの骨転移には、用いられません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3,4 です。
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