問 題
57歳男性。胸部の激痛、呼吸困難、意識障害にて救急搬送された。心電図所見にて急性心筋塞と診断され、直ちにアルテプラーゼが投与された。容態は安定に向かっている。
問264
初期治療として投与されたアルテプラーゼについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- 生物由来製品である。
- 発症後24時間以内なら投与開始可能である。
- 皮下注射にて投与する。
- 血液凝固阻止作用を有する薬剤との併用が推奨される。
- 大手術後、日の浅い患者(14日以内)には禁忌である。
問265
発症後24時間が経過した時点で心室性期外収縮が継続していたので、リドカインの投与が決定した。この症例に用いるリドカイン製剤として正しいのはどれか。1つ選べ。なお( )内は投与部位を示す。
- アドレナリン含有注射液製剤 (硬膜外)
- 筋注用0.5%溶解液製剤 (筋肉内)
- 静注用2%製剤 (静脈内)
- 注射液2%製剤 (硬膜外)
- ビスカス2%製剤 (経口)
問266
リドカインの代謝・消失に関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
- 肝血流量が低下している患者では、リドカインの血中濃度は減少する。
- リドカインは、肝初回通過効果を受けやすい。
- リドカインの肝クリアランスは、血中タンパク結合率の変動の影響を受けにくい。
- リドカインは主としてCYP2C9により代謝されるため、CYP2C9が欠損している患者では血中濃度が上昇する。
問267
アルテプラーゼ、リドカインのいずれかに関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。
- アドレナリンβ受容体を遮断し、異所性ペースメーカー活性を抑制する。
- K+チャネルを遮断し、不応期を延長する。
- 心室筋のNa+チャネルを遮断するとともに、活動電位持続時間を短縮する。
- プラスミノーゲンをプラスミンに変換し、血栓を溶解する。
- フィブリノーゲンに対する親和性が高く、出血を起こしにくい。
正解.
問264:1, 5
問265:3
問266:2, 3
問267:3, 4
解 説
問264
選択肢 1 は、正しい選択肢です。
アルテプラーゼは、遺伝子組み換えによるアミノ酸 527 個から成る糖タンパク質です。
選択肢 2 ですが
急性心筋梗塞では、発症後 6 時間以内が投与可能です。24 時間では、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
アルテプラーゼは、静注です。皮下では、ありません。そんなにゆったり分布させてる場合じゃない薬です。
選択肢 4 ですが
アルテプラーゼ投与により、重篤な「出血リスク」を抱えるため、凝固阻止作用を有する、いわゆる血サラサラにする薬の併用には十分注意する必要があります。投与後 24 時間以降であれば投与可能だが、頭蓋内出血に十分注意。投与後 24 時間以内は、投与は非推奨です。これらから「併用が推奨」は、されていないと考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい選択肢です。
(これをピンポイントに知らなくても、選択肢 2~4 を誤りと判断したいところだと思われます。)
以上より、正解は 1,5 です。
問265
急性心筋梗塞の合併症として致死性の不整脈があります。予防のために、リドカイン「静注」が用いられます。知らなくても「即座に効果が発現するルート」と考えればよいのかと思います。
以上より、正解は 3 です。
問266
選択肢 1 ですが
リドカインは、代表的肝血流依存薬物です。つまり、クリアランスが肝血流の増減と連動します。肝血流低下でクリアランスが減少すると、血中濃度は上昇します。減少では、ありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2,3 は、正しい選択肢です。
選択肢 4 ですが
CYP 2C9 により代謝されるのは、フェニトイン、ワルファリン、トルブタミド などです。リドカインは、主に、CYP 1A2,3A4 で代謝されます。よって、選択肢 4 は誤りです。
以上より、正解は 2,3 です。
問267
アルテプラーゼは
プラスミノーゲンの、プラスミンへの変換を促進することによる血栓溶解剤です。アルテプラーゼは血栓の構成要素であるフィブリンとの親和性が高く、血栓に特異的に吸着します。そして、そこでプラスミノーゲンをプラスミンへ変換するのです。ちなみに、プラスミンは、フィブリンを分解するタンパク質分解酵素です。
リドカインは、クラス Ib 抗不整脈薬です。Na+ チャネル 遮断薬です。Ib という分類は、活動電位時間を短縮する薬です。
以上より、正解は 3, 4 です。
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