薬剤師国家試験 第101回 問252-253 過去問解説

 問 題     

45歳女性。卵巣がん。がん性疼痛に対して以下の薬剤を使用してきたが、疼痛が増強してきたので、追加処方を検討することにした。

問252

ロキソプロフェンNa錠に追加する薬剤として適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. コデインリン酸塩散10%
  2. セレコキシブ錠
  3. モルヒネ硫酸塩水和物徐放錠
  4. メサドン塩酸塩錠

問253

前問で適切と考えた追加処方薬の薬理作用(副作用を含む)として、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 中脳や延髄に作用し、脊髄への下行性抑制系神経を抑制することで鎮痛作用を示す。
  2. プロスタグランジンの産生を抑制し、解熱作用を示す。
  3. 肝臓の薬物代謝酵素によってモルヒネに変換されて鎮痛作用を示す。
  4. 延髄の化学受容器引き金帯(CTZ)を抑制し、制吐作用を示す。
  5. 消化管運動を抑制し、便秘を起こす。

 

 

 

 

 

正解.
問252:1, 3
問253:3, 5

 解 説     

問252

がん疼痛治療は、WHO 三段階除痛ラダーに沿った治療が行われます。本問の症例は、第一段階の非オピオイド鎮痛薬を用いる段階です。次の段階で使用されるのはより鎮痛効果の高いものです。具体的には、第二段階としてコデインリン酸が用いられます。第三段階としてはモルヒネなどが用いられます。(NSAIDsは、原則併用します。)

選択肢 2 のセレコキシブは
ロキソプロフェンと同じ程度の鎮痛しか期待できません。

また、選択肢 4 のメサドンは
オピオイド(モルヒネ等)を使用してなお鎮痛が不十分である時に初めて使用できる薬です。そのため、この患者にいきなり使用するのは不適切です。

以上より、正解は 1,3 です。

(ラダーに従うなら、コデインの1択のような気もするのですが現実には、痛みの強さに応じてモルヒネを使用することも少なくありません。)

問253

前問で適切と考えたのは、コデイン 及び モルヒネ です。

コデインは、プロドラッグです。代謝されて、モルヒネとなり鎮痛効果を示します。

モルヒネは、μ 受容体アゴニストです。神経伝達物質放出を抑制することで抹消からの痛みを伝える信号がブロックされます。(中脳や延髄に作用して鎮痛では、ありません。)消化管の μ 受容体に作用して、腸の運動が低下して起こるほぼ必発の便秘 と脳の神経活動の抑制が原因とされる、呼吸抑制や眠気が 代表的な副作用として知られています。

選択肢 3 がコデインについて正しい記述です。
選択肢 5 が、コデイン 及び モルヒネについて正しい記述です。

以上より、正解は 3,5 です。

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