薬剤師国家試験 第101回 問216-217 過去問解説

 問 題     

55歳女性。身長160cm、体重70kg。起床時右手が思うように動かなくなり、救急外来を受診した。CT検査にてアテローム血栓性脳塞と診断され、入院にて急性期治療を受けた。この患者の血液検査データは以下の通りである。また、医師は重篤な腎障害があると判断した。

クレアチニンクリアランス 20mL/min、BUN 40mg/dL、ALT 7.1U/L、AST 12.5U/L、γ-GTP 10.0U/L、血小板数 20×104/μL

問216

以下は、退院時の再発抑制のための薬物である。この患者への投与が適切でないのはどれか。1つ選べ。なお、退院直前の検査データは入院時と大きな変化はなかった。

  1. シロスタゾール
  2. ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩
  3. チクロピジン塩酸塩
  4. 低用量アスピリン
  5. クロピドグレル硫酸塩

問217

脳塞の発症には血小板凝集反応が関与するものがある。この反応に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. トロンボキサンA2は、血管内皮細胞から放出され、血小板凝集を抑制する。
  2. 損傷した血管壁内から露出したコラーゲンは、血小板凝集を抑制する。
  3. 活性化された血小板どうしは、フィブリノーゲンを介して結合する。
  4. プロスタグランジンI2は、活性化された血小板から放出され、血小板凝集を促進する。
  5. ADP(アデノシン5′-二リン酸)は、活性化された血小板から放出され、血小板凝集を促進する。

 

 

 

 

 

正解.
問216:2
問217:3, 5

 解 説     

問216

選択肢 1 ~ 5 は、どれも血液サラサラにする薬です。再発抑制のための薬物としては妥当です。しかし、本患者は重篤な腎障害があると診断されています。ダビガトランのみ、主に腎臓で代謝されます。よって、正解は 2 であると考えられます。

ちなみに、添付文書によれば、クレアチニンクリアランス 30 mL/min 未満の患者には投与禁忌の薬です。

問217

選択肢 1,4 ですが
血管内皮細胞から放出されるといえば NO や、PGI2 です。これらの物質は血小板凝集を抑制します。ちなみに、TXA2 は、血小板が産生します。血小板凝集を促進します。以上より、選択肢 1,4 は主語である「トロンボキサンA2」 と「プロスタグランジン I2」 が逆です。共に、誤りです。

選択肢 2 ですが
コラーゲンに血小板が粘着します。凝集が促進されます。凝集抑制ではありません。イメージとしては、コラーゲンは三つ編み状の直線上のタンパク質だからひっかかりやすい感じです。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、正しい選択肢です。
フィブリノーゲンは、血小板の膜タンパク質と結合することで血小板を架橋します。

選択肢 5 は、正しい選択肢です。

以上より、正解は 3,5 です。

コメント