薬剤師国家試験 第101回 問204-205 過去問解説

 問 題     

74歳男性。意識障害のため救急搬送されてきた。水分貯留をともなう高血圧性緊急症と診断され、治療方針を話し合う中でニカルジピン塩酸塩とフロセミドの投与が検討された。

問204

緊急対応のため注射製剤が選択された。この薬物投与に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ニカルジピン塩酸塩注射液とフロセミド注射液を注射筒内で混合して投与できる。
  2. ニカルジピン塩酸塩は急速静注が推奨される。
  3. 両剤とも生理食塩液又はブドウ糖注射液で希釈できる。
  4. フロセミドは、電解質失調に注意して投与する。

問205

処方薬の物性を測定する目的で、種々のpHで水溶液(50μg/mL)を調製し、その5mLずつに、それぞれ1-オクタノール5mLを加えてよく振り混ぜ、分配平衡に達した後、水層中の薬物濃度を測定した。以下の表は、処方されたどちらかの薬物の結果である。この結果に関する記述として正しいのはどれか。2つ選べ。

ただし、この薬物は1-オクタノールとの相互作用を起こさず、また、イオン形薬物の1-オクタノールへの分配は起こらないものとする。

  1. 塩基性薬物ニカルジピンの測定結果である。
  2. 酸性薬物フロセミドの測定結果である。
  3. この薬物の分配係数は、約10である。
  4. この薬物のpKaは、約6.0である。
  5. この薬物のpKaは、約4.0である。

 

 

 

 

 

正解.
問204:3, 4
問205:2, 5

 解 説     

問204

フロセミドがループ利尿薬で、電解質失調に注意して投与するのは納得だと思います。選択肢 4 は正しい記述です。残りの選択肢 1 ~ 3 の中では、選択肢 3 が考えやすいかと思います。

選択肢 3 ですが
「生理食塩水での希釈がダメな注射剤」といえば → ハンプ、ナファモスタット。理由は沈殿が生じるから。「ブドウ糖での希釈がダメ」といえば → フェニトイン、アンピシリン など。フェニトインは、沈殿が生じる。アンピシリンは、還元作用により、分解されちゃう。フロセミドやニカルジピンはふつうに希釈できるだろう。ぐらいで考えて、正解は 3,4 と選べるといいのではないでしょうか。

参考までに、選択肢 1 ですが
フロセミド注射剤といえば、塩基性注射剤の代表例です。※注射剤として、溶かす液の
影響で塩基性です。フロセミド自体は、酸性であることに注意が必要です。そして、塩基性注射剤としてニカルジピンは聞いたことがないから、ある程度酸性なのではないか。 → 中和反応がおきてしまいそうなので、少なくとも注射筒(シリンジ)内では混ぜないだろう。と考えると選択肢 1 は誤りであると判断できるのではないでしょうか。

選択肢 2 ですが
実習などでアンプルの実物を見たことがあって、希釈して使ってたから点滴でテキテキ投与。急速静注では、ないよな~ぐらいではないかと思います。

問205

pH が高くなるほど水槽中に移行していることから、酸性薬物であることがわかります。なぜなら酸性薬物であれば、塩基性条件下で酸塩基反応により H を与えるため、イオン形になるからです。選択肢 2 が正しい記述です。

選択肢 3 ~ 5 ですが
まずは、pH = 1 、つまり周りが酸性 → 薬物が全て分子形の時を考えます。この時、水層中が 0.50 μg/mL なので、有機層は、49.5 μg/mL のはずです。よって、真の分配係数は、99 です。

次に、pKa とは、分子形とイオン形が 1:1 となる pH です。もしも pKa = 6 とすると、水層中の薬物濃度が 25 →水層中の分子形とイオン形が1:1なので分子形が 12.5 μg/mL 。一方、有機層中の薬物濃度は 25 。分子形の薬物濃度の比は2です。これは、真の分配係数と比べて小さすぎなので実際には、もっとイオン形が多いと考えられます。

一方、pKa = 4 とすると、水層中の薬物濃度が 1.0→水層中の分子形とイオン形が1:1なので分子形が 0.5 μg/mL。一方、有機層中の薬物濃度は 49.0 となります。これは、ほぼ真の分配係数と等しくなるため、pKa は、約 4 であるとわかります。

以上より、正解は 2,5 です。

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