問 題
65歳男性。慢性閉塞性肺疾患の既往歴あり。数年前から労作時に息切れ、動悸を覚えるようになった。数日前から風邪様症状が出現し、夜間咳嗽、喀痰とともに起坐呼吸の状態となった。
身体所見:身長 172cm、体重 69kg、血圧 140/85mmHg、脈拍 108/分(不整)、頸静脈怒張、収縮期雑音、下肢の浮腫著明。
検査所見:BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド) 716pg/mL(基準値 18.4pg/mL以下)。
胸部X線写真:心胸郭比(CTR) 71.5%、心電図:心房細動と左室肥大。
この患者に対する治療薬について、医師から薬剤師に相談があった。提案すべき治療薬として適切でないものはどれか。2つ選べ。
- リシノプリル水和物
- フロセミド
- カルペリチド
- メキシレチン塩酸塩
- リキシセナチド
解 説
起座呼吸や むくみ があって、BNPは高値 なので、急性心不全を連想します。
選択肢 1 ですが
リシノプリルは、ACE 阻害薬です。血圧を下げると共に抗心不全作用を有します。提案として、適切であると考えられます。
選択肢 2 ですが
フロセミドは、利尿薬です。利尿を促進 → 体内の循環血液量減少 → 心臓が押し出さなければいけない液体の量が減少 → 心臓の負担が減少 という狙いです。提案として、適切であると考えられます。
選択肢 3 ですが
カルペリチドは、ANP です。急性心不全に用いられます。静注で用います。血管拡張作用、利尿作用等により心臓への負荷を軽減します。提案として、適切であると考えられます。
選択肢 4 ですが
メキシレチンは、クラスⅠb の抗不整脈薬です。不整脈に用いる薬であり急性心不全に対する提案としては不適切であると考えられます。
選択肢 5 ですが
リキシセナチドは、GLP-1 作動薬です。糖尿病薬です。急性心不全に対する提案としては不適切であると考えられます。
以上より、正解は 4,5 です。
ちなみにですが
COPD による呼吸機能の悪化は、心不全の併発を引き起こします。COPD を有する患者の心不全リスクが高い理由は、COPD → 換気障害がおきている。→ 酸素が行き渡りにくく「低酸素血症」。→ 元気な肺胞に血液を流したいので、それ以外の肺胞への血流を送る肺血管が適応として「細くなる」。→ 肺血管抵抗が 上昇 → 肺への血流を送る時の 心臓の負荷が 上昇 → 右室が、緊張状態 上昇。 という流れをイメージすると理解しやすいと思います。
すると、拡張している時ですら圧が高い状態 → 心臓のリモデリングが進んで心拡大。また「全身から静脈を通じて戻る血が滞りがち」→特に下脚の浮腫 として表れる。 さらに「右室拡大から、右心不全」 です。心不全になると肺血流が特に減少 → 呼吸困難 という症状につながります。
以下 雑感
COPD の原因といえば、喫煙だけど、このメカニズムを考えると「常に緊張状態」→いつも呼吸が浅い → いつも低酸素 という流れから全く同様に、心不全リスク 高い と連想。ヨガや、鍼灸、温泉療法によるリラックス効果 を考えると「週 1 でヨガや鍼灸+広いお風呂でまったり」 で40年間(25歳~65歳 を想定。)継続 とかって、結果的にすごい予防効果なのでは。。追跡ができれば面白いんだけどなぁ。スーパー銭湯やヨガをやってるスポーツジムとかと連携して。以上 雑感。
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