薬剤師国家試験 第101回 問96 過去問解説

 問 題     

L-リシンは、2つのアミノ基と1つのカルボキシ基をもち、水溶液のpHにより4つの化学種が存在する。図に示したL-リシンの化学種が最も多く存在するpHに最も近い値はどれか。1つ選べ。ただし、L-リシンの3つのpKaはそれぞれpKa1=2.2、pKa2=9.0、pKa3=10.5とする。

  1. 2.2
  2. 5.6
  3. 9.0
  4. 9.7
  5. 10.5

 

 

 

 

 

正解.4

 解 説     

側鎖の NH2 , COOH の所の H が、pH によってついたり離れたりします。NH2 部分は、NH か、NH3+ になります。COOH 部分は、COOH か COOになります。

4つの化学種とは
1:全ての H がついている。(pH 低め。酸性)
2:1個 H が外れる。(少し pH 塩基性へ)
3:1個 H が外れて、1個 H がつく
4:1個 H が外れて、2個 H がつく と考えられます。

pKa とは、ちょうど 1:1 になる pH のことです。pKa 3つ についてまとめると以下のようになります。(側鎖のアミノ基 及び カルボキシ基のみの構造に略しています。丸で囲ったものが、問題の分子種です。)

pH = pKa において、平衡状態にある物質の比が 1:1 なので、pH = 9.0 時に「求める化学種:NH3+ が 2つある化学種」が 1 : 1 で存在している、とわかります。そして、pH = 9.0 よりも、もう少し高くなると NH3+ がもう少しだけ NH2 になると考えられます。

この際、求める化学種が増える一方で、両方とも NH2 である化学種も増えていきます。そして、pH = 10.5 の時に「求める化学種:NH2 が2つある化学種」 が1:1 になる、という流れになります。

つまり、pH = 9.0 ~ 10.5 では、求める化学種が 50 % よりも多く存在すると考えられます。この範囲に正解があります

以上より、正解は 4 です。

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