問 題
体内動態が線形 1 – コンパートメントモデルに従う薬物を経口投与した場合、最高血中濃度到達時間が遅延する原因として正しいのはどれか。1 つ選べ。
- 吸収速度定数の増大
- 投与量の低下
- 分布容積の低下
- 消失速度定数の低下
- 吸収率の増大
解 説
経口投与での 1 -コンパートメントモデルなので「吸収コンパートメント」 と「中心コンパートメント」 が仮定されます。
はじめはどんどん、吸収 → 中心 へと薬物が移行します。中心からは、薬物が少しずつ体外へ排出されます。最高血中濃度に到達するのは吸収コンパートメントにおいてだんだん薬物が少なくなり、吸収側 → 中心側 へと薬物が移行する速度が、中心側 → 体外へ排出 する速度と等しくなる時です。それ以降は、中心側 → 体外へ排出 する速度の方が大きくなり血中濃度はだんだん減少していきます。
経口投与の1コンパートメントなので
『tmax = ln(ka/ke)/(ka – ke)』 が公式でポイントです。式の中にある変数が ka (吸収速度定数), ke (消失速度定数)なので、ka,ke が変化した時に tmax は変化します。以上をふまえて、各選択肢を検討します。
選択肢 2,5 は変化しない選択肢です。
投与量、吸収率が変化しても、ka,ke は変化しません。よって、tmax も変化しません。
選択肢 1 ですが
ka が増えると tmax は減ります。吸収速度定数が増えているのだから、急速に血中濃度が上がって、Cmax に到達するだろうと考えられるためです。Cmax 到達が速くなれば、tmax は短くなります。
選択肢 3 ですが
CL = ke・Vd なので、Vd が低下すると、CL↓や ke ↑ が考えられます。もしも ke↑となると、tmax は短くなります。また、必ずしも ke ↑と判断することもできません。よって、選択肢 3 は正解ではありません。
以上より、正解は 4 です。
ke が低下すれば、なかなか消失できないため、吸収側→中心側 へと薬物が移行する速度が中心側→体外へ排出 する速度と等しくなる時間が遅くなると考えられます。すなわち、tmax が大きくなります。
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