薬剤師国家試験 第100回 問331 過去問解説

 問 題     

院内の安全対策研修会で、下記の事例をもとに医療事故の対応を多職種で議論した。

事例

60歳女性。関節リウマチの診断で今回より初めてメトトレキサートカプセル2mg3カプセルが4週間分処方された。本来、週1回服用のところ、連日服用で28日分調剤された。服用開始18日目に倦怠感、食欲不振、歯肉出血が出現したため自己判断で服用を中止した。

その3日後に外来受診し、検査の結果、口腔粘膜障害、胃腸障害、肝機能障害、骨髄抑制が認められたため緊急入院となった。

議論の中で、この患者への処置について薬剤師が意見を求められた。この薬剤の特徴から考えて効果的なのはどれか。2つ選べ。

  1. ホリナートカルシウムの投与
  2. ビタミンK製剤の投与
  3. 薬用炭の投与
  4. 炭酸水素ナトリウム注射薬の投与

 

 

 

 

 

正解.1, 4

 解 説     

選択肢 1 は、正しい選択肢です。
ホリナートは、葉酸の活性型製剤です。メトトレキサートによって生じる副作用の回避のために用いられます。

選択肢 2 ですが
ビタミンK製剤は、抗生物質服用に伴う腸内細菌叢の変化による、ビタミン K 産生不足などに対して用いられます。本症例に対しての使用は効果的ではないと考えられます。

選択肢 3 ですが
薬用炭は、中毒物質の吸収を減少させることによる解毒に用いられる薬剤です。本症例では、すでに18日間投与が行われており、薬用炭投与は効果的ではないと考えられます。

選択肢 4 は、正しい選択肢です。
メトトレキサートは腎排泄型、弱酸性薬物です。尿の pH をアルカリ側に変化させることで、尿に溶けやすくなり、尿中への排出量が増加します。排出増加により速やかに副作用の軽減を期待できます。

以上より、正解は 1,4 です。

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