問 題
76歳男性。体重72kg。先週より腰痛があり、整形外科を受診し、神経障害性疼痛の診断を受けた。同日保険薬局を訪れ、処方せんをお薬手帳と共に保険薬局の薬剤師に手渡した。手帳には以下の記載があり、約2週間前から胃潰瘍治療薬を服用していることを薬剤師は確認した。
今回の処方せんは以下のとおりであった。
問286
腎機能を評価する上で、糸球体ろ過量(値または率、GFR)を最も正確に評価できるものはどれか。1つ選べ。
- 血清クレアチニン値
- 血中尿素窒素(BUN)値
- イヌリンクリアランス値
- 尿中β2ミクログロブリン値
- PSP値(フェノールスルホンフタレイン試験)
問287
薬剤師が、プレガバリンカプセルの添付文書を確認したところ、クレアチニンクリアランス(mL/min)≧60の場合の初期投与量「1回75mg、1日2回」、≧30-<60の場合の初期投与量「1回75mg、1日1回」、≧15-<30の場合の初期投与量「1回50mg、1日1回」と記載されていた。
この患者の薬物治療に対する薬剤師の対応として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- お薬手帳の処方1の薬剤とプレガバリンとの併用は禁忌であると考えて、お薬手帳に記載された内科医に疑義照会した。
- お薬手帳の処方2の薬剤とプレガバリンとの併用は禁忌であると考えて、今回の処方医に疑義照会した。
- プレガバリンの投与量が少ないと考えて、今回の処方医に疑義照会した。
- プレガバリンの投与量が少ないと考えて、お薬手帳に記載された内科医に疑義照会した。
- 適切な用量の処方であると判断して、調剤を行った。
正解.
問286:3
問287:5
解 説
問286
GFR の最も信頼性の高い測定法はイヌリンクリアランスです。
イヌリンは糸球体において完全にろ過され、腎尿細管において分泌をうけず、かつ、再吸収されることもありません。そのためイヌリンを投与し、イヌリンクリアランスを測定すれば GFR を正確に測定することができます。よって、正解は 3 です。
ちなみに
イヌリンクリアランス測定は、正確な GFR が測定できるという長所の反面、時間がかかる上に患者負担も大きいという短所もあります。(患者負担の具体例としては、正確な測定のために 検査当日 絶食、採尿にある程度の飲水量が必要 など)そのため、採血を行い血清クレアチニンから推測するという簡便な方法等が一般的に用いられています。
問287
選択肢 1,2 ですが
プレガバリンと併用禁忌の薬はありません。(第 100 回 国試出題時点)よって、選択肢 1,2 は誤りです。
選択肢 3 ~ 5 の正誤を判断するために、患者のクレアチニンクリアランスを計算します。Cockcroft & Gault 式によれば、クレアチニンクリアランスは
※ Scr は、血清クレアチニン のこと。
なので、数値を代入すると、Weight と 分子の 72 がちょうど約分されて、64/3 ≒ 21 となります。すると確認した添付文書から「1回50mg、1日1回」 が初期投与量として適切である、とわかります。
処方はプレガパリンカプセル 25mg 1回 2 カプセル(1日2カプセル) 1日1回 です。つまり 1回 50 mg 、1日1回であり、適切であるとわかります。
以上より、正解は 5 です。
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