問 題
36歳女性。常に下腹部が張っていて、排便回数は3~4日に一度であり、排便後もすっきりしない。最近は顔に吹き出物ができ、なかなか治らないため来局した。薬剤師と相談し、大黄甘草湯を購入することとなった。
問214
この際、薬剤師が確認、指導する内容として適切でないのはどれか。1つ選べ。
- 他の下剤の使用の有無を確認した。
- 妊娠していないかを確認した。
- 薬だけに頼らず、適度な運動を心掛けるよう指導した。
- 症状が良くならなくても、少なくとも2週間は服用するよう指導した。
- 脱力感や筋肉痛が現れ、徐々に強くなるようなら服用をやめ、申し出るよう指導した。
問215
大黄甘草湯に含有されるセンノシドA及びその誘導体に関連する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- センノシドAは、トリテルペンの一種である。
- 化合物A~Cは腸内細菌が産生する酵素によって生成される。
- 炭素aの絶対配置はSである。
- 化合物Cは、化合物Bの酸化的開裂によって生じる。
- 大黄甘草湯が示す瀉下作用の活性本体は化合物Cである。
正解.
問214:4
問215:2, 5
解 説
問214
選択肢 1,2,3,5 は、正しい選択肢です。
他の下剤にも、大黄甘草湯の有効成分であるセンノシドが含まれることがあり、併用は避けます。
大黄甘草湯は、流産の危険性を高める可能性があることから妊娠中(可能性含む)の服用はできるだけ避ける必要があります。(医師の診断のもとリスクとメリットを考慮した上で処方されることはあります。)
薬だけでなく、運動による改善も重要です。運動不足による、腹筋等の筋力低下は便秘の大きな原因だからです。
脱力感や筋肉痛は、カンゾウに含まれるグリチルレチン酸による低カリウム血症に伴うミオパチーの初期症状と考えられるため、脱力感や筋肉痛について注意が必要です。
選択肢 4 ですが
1週間を目安に、症状の改善が見られなければいったん服用を中止するよう指導します。安易な下剤の長期連用は更なる便秘の重症化につながるためできるだけ避けるようにします。よって、選択肢 4 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
問215
選択肢 1 ですが
トリテルペンとは、ステロイドのような6,6,6,5環 が、少しずれてくっついているような構造の物質の総称です。センノシドA のように、横にきれいに並んでいる構造の物質は、違います。ちなみに、センノシドは、アントラキノン類の一種です。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は、正しい選択肢です。
腸で働いて欲しい物質が、腸内細菌によって活性代謝を受けるという点に注目すると、自然のドラッグデリバリーシステムということができます。
選択肢 3 ですが
不斉元素の R,S は、1:炭素とつながっている4つの原子の優先順位を定める、2:一番優先順位が低い原子を目線の先に置いた構造をイメージする。そして、残った3つの原子の優先順位を、1→2→3 と矢印でつなぐ、3:矢印が右回りなら、R、左回りなら、S というステップを経て判断します。
まず、炭素 a から出ている原子は一つだけ水素なので、明らかに水素の優先順位が一番低いことがわかります。次に、炭素 a から上に出ている炭素を b 、左下に出ている炭素を c 、右下に出ている炭素を d とおきます。これらの優先順位を、以下説明します。
b からつながっている元素は、炭素2つ、水素1つ です。c,d からつながっている元素は炭素3つです。ここから、bの優先順位が、b,c,d の中では一番低い 『3』 です。
c,d からつながっている元素は、ほぼ対称で同じようですが d からつながっている方にだけCOOH がついているため、こちらの方が、優先順位が高いと判断します。
以上より、b,c,d の優先順位は、b 『3』、c『2』、d『1』です。ここまで、確実に各炭素の優先順位が判断できているか確認してみてください。
次に、R,Sを判断するために、炭素 a と結合している元素の中で明らかに優先順位が最も低い点線でつながっている水素を目線の先においた構造を考えます。以下がイメージです。
dが『1』、cが『2』、bが『3』だから、d→c→bと矢印でつなぐと右回りになります。以上より、この炭素の絶対配置は R です。S ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
腸内細菌は、主に還元、加水分解を行います。酸化的開裂ではなく、還元的開裂です。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は、正しい選択肢です。
活性本体である化合物 c はレインアンスロンと呼ばれます。
以上より、正解は 2,5 です。
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