問 題
明治・大正期の我が国の文学に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.明治初期,坪内逍遙は,江戸時代以来の大衆文芸である戯作文学の勧善懲悪主義と西洋文学の写実主義との融合を提唱し,その考え方をまとめた『小説神髄』を著すとともに,小説『安愚楽鍋』を著し,我が国の近代小説の先駆けとなった。
2.明治中期,尾崎紅葉は,我が国で初めて言文一致体で書かれた小説『浮雲』を著すとともに,国木田独歩らと民友社を結成して雑誌『国民之友』を発刊し,写実主義と言文一致体によってもたらされた近代小説の大衆化を進めた。
3.明治末期には,英国やドイツの影響を受けた自然主義が文壇の主流となり,留学経験もある夏目漱石と森鷗外は,人間社会の現実の姿をありのままに描写する作品を著して,自然主義文学を代表する作家として活躍した。
4.大正期には,人道主義・理想主義を掲げ,雑誌『白樺』を拠点に活動した志賀直哉や武者小路実篤らの白樺派,新現実主義を掲げ,雑誌『新思潮』を拠点に活動した菊池寛や芥川龍之介らの新思潮派が活躍した。
5.大正末期には,社会主義運動・労働運動の高揚に伴って,プロレタリア文学運動が起こり,機関誌『改造』が創刊されて,幸田露伴や小林多喜二らが,労働者の生活に根ざし,階級闘争の理論に即した作品を著した。
解 説
選択肢 1 ですが
坪内逍遥は「勧善懲悪」などを「否定」し、写実主義を「提唱」しました。代表作「小説神髄」はOKです。「安愚楽鍋」は書いていません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
尾崎紅葉ときたら、写実主義、言文一致、代表作は「金色夜叉」です。「浮雲」は二葉亭四迷により書かれました。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
夏目漱石は「反自然主義」です。代表作は「我輩は猫である」、「こころ」です。森鴎外は「ロマン主義」です。代表作は「舞姫」です。よって、選択肢 3 は誤りです。ちなみに、自然主義といえば、田山花袋の「布団」、島崎藤村の「破戒」です。
選択肢 4 は、妥当な記述です。
選択肢 5 ですが
プロレタリア文学の機関紙は「戦旗」です。幸田露伴は理想主義的作品、代表作は「五重塔」です。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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