公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.44解説

 問 題     

G.エスピン-アンデルセンが『福祉資本主義の三つの世界』(1990 年)の中で論じた福祉国家のレジームに関する記述A~Dのうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

A.彼は,脱商品化と階層化という二つの指標に基づいて,福祉国家を,保守主義レジーム,自由主義レジーム,社会民主主義レジームの三つに類型化した。彼は,脱商品化の程度について,自由主義レジームが最も低く,社会民主主義レジームが最も高いとした。

B.彼は,保守主義レジームでは,政府の役割が大きく,必要な人に対して必要なサービスが保障され,労働者階級と中間階級の間に二重構造が生じることを容認しないとした。彼は,その代表的な国として,スウェーデン,デンマークなどを挙げた。

C.彼は,自由主義レジームでは,個人の責任が強調され,市場の役割が重視されるとした。また,社会保障給付は例外的なものとして選別主義的に提供され,一般に給付の水準は最低限のものになると考えた。彼は,その代表的な国として,米国,カナダなどを挙げた。

D.彼は,社会民主主義レジームでは,家族の機能や役割が重視されており,家族の介護能力が限界に達した場合にのみ国家が介入するとし,社会保険制度が社会保障の中核であるとした。彼は,その代表的な国として,ドイツ,フランスなどを挙げた。

1.A
2.B
3.A,C
4.B,D
5.C,D

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

アンデルセンによれば、国家、家族、市場の 3者でリスクが共同管理されるパターンを「福祉レジーム」と呼び、3 者それぞれがサービス提供の際に用いる分配原理の違いなどで、3 つの類型に分けられます。3 類型とは「自由主義レジーム」「保守主義レジーム」「社会民主主義レジーム」です。

自由主義レジームでは、リスクは原則個人が担います。保守主義レジームでは、家族に期待される福祉機能が大きいです。社会民主主義レジームでは福祉の「脱商品化」が図られ、国家の担う役割が大きい点が特徴です。

記述 A は妥当です。

記述 B ですが
保守主義レジームで役割が大きいのは「家族」です。政府ではありません。記述 B は誤りです。

記述 C は妥当です。

記述 D ですが
社会民主主義レジームで役割が大きいのは政府です。代表的な国はスウェーデン、デンマークなどです。

以上より、正解は 3 です。

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