公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.31解説

 問 題     

J.J.ルソーの教育思想に関する記述A〜Dのうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

A.彼は,政治参加権を持つ「市民」の教育と,それ自体が絶対的な存在である「人間」の教育の両方が不可欠であると考えた。そして,どちらの教育についても学校で行わなければならないと主張した。

B.彼は,子供は生まれながらにして堕落した存在であるという性悪説に立ち,幼児期の教育において,義務や社会規範を積極的に教えなければならないとした。特に,社会規範を積極的に教えることにより,子供は真理を理解し,善を愛することが可能になるとした。

C.彼は,子供を小さな大人としてではなく,子供本来の姿として捉えることを主張し,「子供の発見者」と呼ばれた。そして,彼は,子供には大人とは異なった特有の考え方,感じ方があるとして,子供の価値と固有性を認めた。

D.彼は,『エミール』の中で,実在の少年エミールの誕生から結婚までの成長過程を描いた。ここでは,人間の知的発達は,「知的理性の段階」,「感覚的理性の段階」,「感覚の段階」の順に発達するとされており,それぞれの段階に適合した教育の必要性が示されている。

1.A
2.C
3.A,B
4.B,D
5.C,D

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

記述 A ですが
ルソーは著書「エミール」の中で、理想の教育を小説体で記述しました。その内容は、家庭教師が教え導く形です。従って「学校で行わなければならない」という主張ではないと考えられます。記述 A は誤りです。

記述 B ですが
ルソーの著書「エミール」から、よく引用される文として「創造主の手から出る時には、すべてが善いものであるが、 人間の手にかかるとそれらがみな例外なく悪いものに なってゆく。」があります。生まれたてが「善い」と考えているため、性善説に立っていると考えられます。「性悪説に立ち・・・」という記述は妥当ではありません。記述 B は誤りです。

記述 C は妥当です。
「エミール」が「子どもの発見」の書と呼ばれます。

記述 D ですが
順番に違和感を覚えるのではないでしょうか。ルソーは「エミール」において、まず感覚器官の訓練により、理性を準備する教育=消極教育を唱えました。従って、知的発達はまず「感覚の段階」から始まると考えられます。記述 D は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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