公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.21解説

 問 題     

前頭葉に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.前頭葉は,後連合野からの入力があり,感覚刺激に関して高次な処理を受けた情報が集まっているほか,大脳辺縁系からも線維連絡を受けており,動機づけなどに関する情報の入力もある。これらの情報の伝達が一方向的であることから,迅速かつ効率の良い情報の処理が可能になっている。

2.前頭葉は,「外側部」,「眼窩野(部)」,「内側部」の三つに大別できる。外側部は,帯状回や海馬等と共にパペッツの回路と呼ばれる回路を形成しており,情動や動機づけ機能にとって重要であるとされている。一方,眼窩野(部)と内側部は,物事を計画的に秩序立てて行う能力にとって重要であるとされている。

3.前頭葉を損傷すると,他者への暴力や攻撃性,計画性のない行き当たりばったりの行動が増えるなどの行動上の変化が見られる一方,「何事にも興味が持てない」といった社会行動への意欲の低下は見られない。こうした特徴は,前頭葉損傷患者に特有であり,かつ共通して見られるものである。

4.前頭葉を損傷すると,意思決定に問題が生じることがある。ダマジオ(Damasio, A. R.)は,不確実な予測しかできないような場面での意思決定は,その結果を予期する際の身体反応に影響を受けるが,その身体反応の生成には腹内側前頭前皮質が関与しているというソマティック・マーカー仮説を提唱した。

5.前頭葉を損傷すると,感覚や運動の基本的能力に障害が生じることから,同部位の損傷の有無を特定することは比較的容易である。また,知的能力全般に明らかな低下が生じるため,同部位の損傷についての確定診断のために,一般的に,感覚や運動の基本的能力の障害の有無の確認と併せて知能検査が実施される。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
前頭葉は、思考等を担い、人を人たらしめる最高中枢と考えられています。前頭葉とその繊維連絡は「双方向的」です。「一方向的」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
パペッツの回路は「海馬」を中心とした回路です。海馬は「側頭葉」の深部に位置する一対の部位です。前半部分の記述は妥当です。後半部分ですが「物事を計画的に秩序立てて行う」といったプランニングに重要な部分について外側部が妥当と考えられます。

プランニングという機能と、外側部という部位の対応を覚えていなくても、「プランニングのような人間らしさが相対的に高い機能について、より脳の外側(=進化的に最近発達)が担うのでは?「内側部」は違和感があるなぁ」といった形で推測できるとよいかもしれません。

選択肢 3 ですが
「何事にも興味が持てない」といった社会行動への低下が見られます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
ソマティックマーカー仮説は、意思決定において情動的な身体反応が重要な信号を提供するという仮説です。

選択肢 5 ですが
前頭葉を損傷すると、言語や思考等を担う部位の損傷なので、失語、記憶障害、注意障害などが見られます。感覚や運動の基本的能力に障害が生じるわけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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