公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.9解説

 問 題     

児童虐待の影響に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.虐待を受けた者は,養育者との関わりの中で感情表出の抑制を学習できないことが多く,感じていることを表情や態度に直接的に表しやすい。このため,虐待を受けた者は,ささいなことをきっかけに感情を爆発させてしまうとされている。

2.身体的虐待やネグレクトを受け始めた年齢が,そうした虐待を受けた者の自己破壊的行動の重篤度やその形態に与える影響は大きく,その年齢が低いほど,自己に攻撃性を向ける傾向にあることが報告されている。

3.性的虐待を受けた者は,一般に性的行動を拒絶する傾向にある。これは,性的虐待を受けることで自分を「汚れてしまった」と思い,その「汚れてしまった自分」に直面してしまう性的行動を回避するためであるとされている。

4.虐待を受けた者は,一般に「自分が悪いから虐待を受ける」という誤った認知を持つ傾向にある。ただし,自分を虐待する者以外との対人関係においてはこうした認知のゆがみは生じず,教師などの周囲の大人や友人との関係性に影響を与えることはまれである。

5.身体的虐待を受けた者は,一般に怒りの表情を認知する能力が低くなる傾向にある。そのため,他者の怒りに鈍感になってしまい,他者の怒りを誘発するような行動をやめることができず,結果として他者の怒りを買いやすくなる。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
感情表出が苦手である傾向が知られています。「感じていることを表情や態度に直接表しやすい」というのは、妥当ではないと考えられます。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。

選択肢 3 ですが
性的虐待を受けた者に特徴的な行動として性化行動があります。性化行動とは、年齢に見合わない強い性的関心や言動が見られるなどです。「一般的に性的行動を拒絶する傾向がある」という記述は妥当ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
「自分を虐待する者以外との対人関係においてはこうした認知のゆがみは生じず」というのは、明らかに妥当ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
身体的虐待を受けた者は、他者の表情を「怒り」と認知しやすくなる傾向が知られています。「怒りの表情を認知する能力が低くなる傾向」ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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