公務員試験 H30年 法務省専門職員 No.7解説

 問 題     

ケリー(Kelly, G. A.)が提唱したパーソナル・コンストラクト(個人的構成体)理論に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.従来,人は,様々な事象を観察し,自ら仮説を立てて,その事象を解釈すると考えられていたが,ケリーは,それを否定し,人は,自ら仮説を立てるのではなく,養育者から受け継いだ物事の見方に当てはめて,日常において生じる様々な事象を解釈すると考えた。

2.パーソナル・コンストラクトは,「強い-弱い」といった双極的な性質を持ち,辞書的な意味で正反対の概念から構成されており,この対自体は誰にとっても共通である。その人独自の事象の捉え方は,有しているパーソナル・コンストラクトの組合せによって形作られる。

3.パーソナル・コンストラクトには,様々な事象に用いられるものだけでなく,ある特定の事象に対して用いられるものもあり,例えば,「背が高い-背が低い」というパーソナル・コンストラクトは,その適用範囲に限界がある。

4.パーソナル・コンストラクト理論では,その人が所有するパーソナル・コンストラクトによって,他者を含む事象の解釈の仕方に個人差が生じることは説明されたものの,その事象の予測や制御が行われることまでは想定されていなかった。

5.ケリーが考案した役割構成レパートリーテスト(Rep テスト)は,家族以外の身近な人物を列挙し,その人たちに共通する役割や性格を表す言葉をできるだけ多く挙げさせ,その多様性から個人のパーソナル・コンストラクトを測定するものである。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

ケリーのパーソナル・コンストラクト理論とは、人が様々な事象を経験し、それらの間の類似性、相違を認知することで「コンストラクト」と呼ばれる認知構造を形成し、独自のコンストラクトを通じて外界を認知、解釈するという考え方です。独自のコンストラクトに基づき、よい結果を生むと予測される行動がなされると考えました。

そして、個人のコンストラクトのアセスメント法として「レパートリー・グリッド法」を開発しました。レパートリー・グリッド法とは、エレメントと呼ばれる刺激を3つずつ提示し、比較させ、類似点あるいは対照点を自由に回答してもらうという方法です。

選択肢 1 ですが
「養育者から受け継いだ物事の見方に当てはめて」というわけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
「パーソナル・コンストラクト」は、独自性のあるものです。「辞書的な意味で正反対の概念から構成されている」わけではありません。また、「この対自体が共通」でもありません。一例をあげるなら、ある人にとって「困難」と「幸福」は全く類似性を感じない一方で、ある人にとっては(困難の先に幸福があるのだから)「困難」は「幸福」の類義語と考えているかもしれません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。

選択肢 4 ですが
パーソナル・コンストラクト理論は、「独自のコンストラクトを通じて外界を認知、解釈する」という考え方で、解釈の結果に基づき、予測や制御が行われるという考えです。「事象の予測や制御が行われることまで想定されてはいなかった」という記述は妥当ではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
共通するものだけでなく、「対照点」も自由に回答してもらいます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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