公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.54解説

 問 題     

グローバル化に伴う様々な事象や議論に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.世界貿易の拡大に伴い,自由貿易体制に参加する国々が増加し,現在では,世界貿易機関(WTO)の加盟国数は国際連合の加盟国数を上回っている。自由化を目指す対象分野も順次拡大されており,WTO では,工業製品だけでなく,農産品を自由化の対象とすることが喫緊の課題となっている。

2.1997 年のアジア通貨危機は,世界規模で経済・社会の一体化が進展する時代における国際的危機の一つである。韓国の通貨危機を契機として,周辺諸国に次々と波及し,我が国も深刻な打撃を受けた。その結果,我が国を含む東アジアの数か国が国際通貨基金(IMF)の支援を受けることとなった。

3.現代では,反グローバル化の運動も起こっている。1999 年,シアトルにおいて WTO の閣僚会議が開催されたとき,貿易とは一見無関係にみえる環境保護団体や人権保護団体等のグループも参加する大規模な反対デモが繰り広げられ,この会議で WTO は,新ラウンドの開始を決定することができなかった。

4.自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)は,二国間又は少数国間における地域貿易協定である。FTA・EPA は特定の相手国のみと自由化を行うものであるため,WTO は新たな FTA・EPA の締結を禁止しており,WTO が発足した1990 年代は,それ以前と比べて FTA・EPA の件数が減少した。

5.グローバル・ガヴァナンス論は,第二次世界大戦直後の世界にいかなるグローバルな秩序を形成していくことが必要であるかをめぐる議論である。代表的な論者である J.ローズノーは,ガヴァナンスとはルールの体系ではなく,世界政府のような組織によって維持される秩序であるとした。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
WTO の加盟国数は多いだろうけど、国際連合の加盟国数を上回っているは、ないと感じるのではないでしょうか。本試験時点で WTO 加盟国数 164、国際連合加盟国数は 193 です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
アジア通貨危機において、特に被害深刻だった タイ、インドネシア、韓国が IMF 支援を受けました。日本は含まれません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。

選択肢 4 ですが
WTO は加盟国全ての了解が必要であるため、交渉が難航することが多く見られます。そこで、特定国間における FTA/EPA が、WTO 体制の例外として認められており、近年重視されています。FTA/EPA も、目的は自由貿易等の推進です。(H28no54)。「WTO は新たな FTA・EPA の締結を禁止している」ということはありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ローズノーの「ガバナンス」は、国家の上位に政治権威の欠如している状況での相互依存関係の規制といった意味です。「世界政府のような組織によって維持される秩序」ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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