公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.46解説

 問 題     

企業の戦略に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.米国企業の多角化戦略を分類した R.P.ルメルトは,非関連事業の分野に多角化した企業の方が,本業の周辺事業や関連事業といった分野に多角化した企業よりも業績が高いことを明らかにした。彼は,その要因として,経営者の事業の概念における見方や経営資源の割当て方であるドミナント・デザインを挙げた。

2.M.E.ポーターは,競争戦略の基本型について,戦略ターゲットと戦略的優位の二つの基準を用いて類型化した。このうち,戦略ターゲットが業界全体に及ぶ場合は,コスト・リーダーシップ戦略のみが適合的であるとした。また,業界内の特定の市場セグメントのみをターゲットとする場合は,顧客が知覚するユニークさに優位性があれば,集中戦略ではなく差別化戦略が適合的
であるとした。

3.ポジショニング戦略論におけるレントは,企業が希少価値のある資源を保有することから生じるリカードのレントである。異質性が高くユニークな資源を蓄積した企業は,独占的地位を確保できるので,価格を釣り上げて利益をあげることができる。この独占的地位を脅かす新たな敵対関係を分析するためのポジショニング戦略論の枠組みが,VRIO フレームワークと呼ばれるものである。

4.業界標準の獲得競争では,自社規格の製品を他社に先駆けて発売し,後発規格の製品よりも先にクリティカル・マスに到達することがその成否を分けるとされる。一定の普及率であるクリティカル・マスに先に到達することができれば,ネットワーク外部性が働く製品では,その働きによりデファクト・スタンダードの獲得が可能となる。

5.内部的展開によって多様な関連事業に進出した我が国の大手電機メーカーにおいて,製品系列を整理して選択と集中を行うために開発された分析ツールがプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)である。PPM から導かれる戦略類型には,問題児を花形に移行させる「シェア維持」や花形を金のなる木に移行させる「研究開発」などがある。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
多角化戦略を分類したルメルトによれば、中核的能力と競争力に関連した分野に限定して、多角化を行った企業の利益率が高いという結論です。非関連事業の分野に多角化した方が業績が高いと明らかにしたわけではありません。ちなみに、ドミナントデザインとは、ある製品群が成熟化していく中で発生していく標準的・支配的なデザインのことです。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
前半部分は妥当です。M.E.ポーターが唱えた 競争戦略の基本類型は、「コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略」です。(H26no48)。そして、戦略ターゲットが業界全体に及び、かつ、優位性が高い場合において差別化戦略が適合的と考えました。また、ターゲットがせまく、優位性が高い場合は、差別化集中戦略が適合的であるとしました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
レントとは、もともと地代のことです。経営学では、過剰な利益を意味します。ポジショニング戦略論におけるレントは、独占レントです。リカードのレントは、希少な資源を所有することによる比較優位性がもたらすレントです。リソースベーストビュー(RBV) におけるレントです。RBV の分析枠組みが VRIO フレームワークです。(H29no47)。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
ネットワーク外部性とは、製品やサービスの価値が利用者数に依存していることです。

選択肢 5 ですが
問題児を花形に移行させるのが「シェア維持」というのは明らかに用語と内容の対応がおかしいと判断できるのではないでしょうか。問題児への戦略類型は「拡大戦略」です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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