公務員試験 H29年 国家一般職(農学) No.31解説

 問 題     

土壌の種類及び特性に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.我が国の水田は,灰色台地土とグライ土で約7 割を占める。普通畑では,褐色森林土と赤色土で5 割以上となる。樹園地では黒ボク土が約4 割と多い。耕地全体では,灰色台地土とグライ土,褐色森林土の3 種類の土壌で,我が国の農耕地全体のほぼ6 割を占めている。

2.植物に利用され得る水はマトリックポテンシャル0 ~-30 MPa 程度の土壌水であり,これを有効水という。粒子の粒径が細かい土壌ほど,有効水分は多い。例えば,壌土は埴土よりも粘土を多く含むため,有効水分が多い。

3.土壌は,岩石の風化作用と土壌生成作用によってできる。風化作用では,物理的・化学的に岩石が崩壊・変性する。土壌生成作用では,母材が更に物質の溶脱と集積,分解と合成,酸化と還元,有機物の付加・移動,集積などの作用を受ける。

4.陽イオン交換容量(CEC)は,土壌に吸着している陽イオンの量を示す。塩基飽和度はCEC に対し,どのくらいの割合で塩基が保持されているかを示したものである。一般に,塩基飽和度と pH は反比例の関係があり,pH が高いと塩基飽和度は低く,pH が低いと塩基飽和度は高い。

5.高緯度のツンドラ地帯では,植物の生育が不十分で土壌への有機物の蓄積が少ない。そのため,黄褐色や赤褐色の土壌が形成される。低緯度の湿潤地域では,熱帯雨林が発達し植物の生産する有機物生産量が多いため,土壌への有機物の蓄積が多く,暗黒色系の色の土壌が形成される。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
一文目は妥当な記述です。水田灰色台地土+グライ土が主な土壌です。黒くてホクホクしてる、全農耕地の 3割弱を占める「黒ボク土」が普通畑では多いです。樹園地の主な土壌は褐色森林土(4割弱)です。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
マトリックポテンシャルの単位は一般に「kPa」が用いられます。また、粒径が細かい土とは「より粘土っぽい土」です。よって、保水性が高くて「植物に水を与えにくい」、つまり有効水分は小さいと考えられます。そして、壌土よりも植土の方が粘土を多く含みます。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当な記述です。

選択肢 4 ですが
CEC は、土壌に吸着「できる」陽イオンの量です。塩基飽和度についての記述は OK です。ここでいう「塩基」というのが「陽イオン」を表す点は注意が必要です。

そして、土壌の pH と塩基飽和度は「比例」します。この理由ですが、「植物が根から養分」=「陽イオン吸収」です。そしてその際、代わりに植物は  「H+ を土壌に放出」 という反応がおきます。

従って、「H+が多い」=酸性=土壌の pH が「低い」→「土壌養分がいっぱい植物の方に吸収されている」→「塩基飽和度は低い」 ということになります。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ツンドラ地域では有機物の分解があまり進まないため、蓄積は多いです。色は灰色系です。低緯度では有機物分解量が多いため、蓄積は多くありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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