問 題
殺虫剤の種類や使用上の留意事項などに関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.有機リン系殺虫剤は,昆虫の神経伝達系のシナプスのアセチルコリン受容体にアゴニストとして作用して,興奮を持続させて神経伝達を阻害することで作用する。殺虫スペクトルは狭く,環境中の残留性が比較的低い特徴を持つ。
2.ネオニコチノイド系殺虫剤は,昆虫の神経伝達に関与する酵素であるアセチルコリンエステラーゼの働きを阻害し,神経伝達の停止を引き起こすことで作用する。除虫菊の殺虫成分の類縁化合物を合成して作られた殺虫剤で,殺虫力が極めて高い。
3.IGR(昆虫成長制御物質)は,昆虫の成長を制御するホルモン及びそれと類似した化合物で,昆虫の脱皮や変態を阻害し,死に至らしめる。速効性はないが選択性が高い特徴を持つ。脊椎動物に対する毒性は低い。
4.BT 剤は,昆虫病原性土壌細菌を有効成分とする殺虫剤で,チョウ目害虫の防除に用いられている。害虫の体内で細菌が増殖して作用し,他の個体にも感染が広がるため効果が高い。人畜にも感染する場合があるので,使用に当たっては注意が必要である。
5.我が国では,害虫の発生量が多い場合には,殺虫剤の製品の容器に示されている濃度や量を超えて施用することが認められている。また,必要な防除作業を季節を追って記載した防除暦に沿って,病害の発生が見られない場合でも予防的にスケジュールどおりに散布することが望ましい。
解 説
選択肢 1 ですが
有機リン系は「コリンエステラーゼ阻害剤」です。アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを阻害することで、異常興奮を引き起こします。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
ネオニコチノイド系は「ニコチン受容体アゴニスト」です。アセチルコリンエステラーゼ阻害ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当な記述です。
選択肢 4 ですが
BT(Bacillus thuringiensis:バチルス・チューリンゲンシス)剤は、天敵細菌による殺虫剤です。芽胞形成時に殺虫性タンパク質を作り、このタンパク質を幼虫が食べることで、死亡します。「体内で細菌が増殖して作用」ではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
濃度や量は守ります。また、適時適切な散布が望ましいとされています。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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