公務員試験 H29年 法務省専門職員 No.22解説

 問 題     

記憶に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.減衰説とは,時間の経過とともに,記憶情報が自然に消衰し,崩壊していくことで忘却が生じるという考え方である。とりわけ長期記憶については,ミラー(Miller, G. A., 1956)が「マジカルナンバー7 プラスマイナス2 」という論文で示したように,時間の経過とともに記憶情報量は最終的に7 チャンク程度にまで減衰するとされている。

2.干渉説とは,ある時点で記憶した内容が,前後に記憶した内容によって干渉されて忘却が生じるという考え方である。干渉には順向抑制と逆向抑制があり,記憶項目リストを学習して再生するまでの間,起きていた場合の方が眠っていた場合よりも再生成績が悪いという現象は順向抑制の一例である。

3.検索失敗説とは,記憶の消失ではなく,検索の失敗により忘却が生じるという考え方である。人や物の名前を知っているのになかなか思い出せずもどかしい思いをすることを「舌端現象(tipof – the – tongue – phenomenon)」又は「喉まで出かかる現象」と呼ぶが,これは検索がうまくいきそうでいかないという状態を表している。

4.抑圧説とは,自尊心を傷付けられたり,不愉快な思いをしたりする経験を意識的に抑え込むことで忘却が生じるという考え方である。フロイト(Freud, S.)をはじめ多くの研究者が種々の日常例を挙げて抑圧を説明している。抑圧は,抑制と同じく抑え込む機制であるが,無意識の過程である抑制とは区別されている。

5.レミニセンスとは,学習直後より一定時間後の方が記憶成績が良くなる現象のことである。レミニセンスには,無意味材料の記憶で数分程度の比較的短時間内で生じるバラード=ウィリアムズ現象(Ballard-Williams phenomenon)と,有意味材料の記憶で数日程度の比較的長い時間間隔で生じるワード=ホヴランド現象(Ward-Hovland phenomenon)がある。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「マジカルナンバー 7 プラスマイナス 2」「短期記憶」についてです。長期記憶ではありません。ちなみにですが、近年はマジカルナンバー 4プラスマイナス 1 も提唱されています。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
順向抑制「以前学んだもの」による干渉です。逆向抑制「以降学んだもの」による干渉です。起きてることで「以降学んだもの」により再生成績が落ちているため「逆向抑制」です。順向抑制ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
検索失敗説についての記述です。

選択肢 4 ですが
「抑制」は意識的に、「抑圧」は無意識的に抑え込むことです。最後の一文に関して、抑制と抑圧が逆です。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
無意味材料における 10 分以内の「ワード=ホヴランド現象」有意味材料で数日程度の「バラード=ウィリアムズ現象」です。逆になっています。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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