公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.64解説

 問 題     

心理療法に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.精神分析療法は,狭義には,人の行動や神経症的症状が無意識的な願望や衝動の影響を受けて因果的に決定されると考えたフロイト(Freud, S.)が創始した心理療法を指すが,広義には精神分析理論を援用した心理療法も含む。フロイトの精神分析療法では,クライエントが寝椅子に横たわり,六つの標準公式を唱えながら身体機能の調整を行った上で,現在抱えている心理的問題を自由に語り,その解決法を連想的に探る「自由連想法」が用いられる。

2.クライエント中心療法とは,クライエント自身に重要な他者との関係において,「してもらったこと」,「してあげたこと」,「迷惑をかけたこと」を振り返らせ,クライエントが抱えている問題の原因に目を向けさせる心理療法である。その振り返りの過程において,原因の指摘や解決法の提供などをせずに非指示的な態度をとり,クライエントにとって受容的で安心できる場を提供することがカウンセラーに最も重要であるとされる。

3.行動療法とは,クライエントの抱える問題は学習の結果生じたものであり,新たな学習によって行動を変容させることで問題を解消できるという想定に基づき,不適応を引き起こす行動の改善を図る心理療法の総称である。代表的な技法に,新しい適応行動を身に付けさせる際に,最初から目標行動を練習するのではなく,目標行動に結び付くような反応をスモール・ステップで段階的に形成するシェイピング法がある。

4.認知行動療法とは,行動的技法と認知的技法を効果的に組み合わせて用いることによってクライエントの問題の解決を図る心理療法の総称である。代表的な技法に,クライエントが,自身の身体に起こるまだ言葉にならない意味の感覚であるフェルト・センスに注意を向け,それを捉える言葉を見つけることによって,体験の変化であるフェルト・シフトを喚起して認知や行動を変容させることを目的とするフォーカシングがある。

5.森田療法とは,神経質性格を基盤とし,精神交互作用が発展して神経症になるという仮説に基づき,クライエントが,精神交互作用を生み出す「とらわれ」と「はからい」を脱して「生の欲望」の発揮に向かうことを目的とする心理療法である。具体的な方法としては,親(P),大人(A),子供(C)の三つの自我状態についての構造分析や脚本分析などを行うことでクライエントが抱えている問題の解決を図る。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
前半の精神分析療法についての記述は妥当です。後半ですが、6つの標準公式を唱えながら身体機能の調整を行うのは、自律訓練法です。(参考 H26no65)。フロイトの精神分析療法ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
「してもらったこと」,「してあげたこと」,「迷惑をかけたこと」を振り返らせるのは、内観療法です。(参考 H26no65)。クライエント中心療法ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
行動療法についての記述です。

選択肢 4 ですが
認知行動療法について、前半の記述は妥当です。後半ですが、フォーカシングについての記述です。フォーカシングの内容はよいのですが、前半とのつながりが妥当ではありません。フォーカシングは、クライアント中心療法の理論から生まれた自己理解、および心理療法の一技法です。E.T. ジェンドリンが、成功するカウンセリングの特徴を抽出する研究から開発しました。認知行動療法とは別ものです。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
森田療法について、前半の記述は妥当です。後半部分ですが、森田療法の具体的方法は「絶対臥褥期」、「軽作業期」など『4つ』の段階を通して行います。親(P)、大人(A)、子ども (C) の3つについて分析を行うのは交流分析です。(H26no65)。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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