問 題
社会集団の類型としての「群衆」,「公衆」,「大衆」に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.G.タルドは,群衆を,暗示により扇動され,合理的判断を容易に失い,不善をなすような存在であるとみなした。また,彼は,群衆は異質性の高い成員で構成される組織化された集合体であるとした。
2.K.マンハイムは,公衆を,肉体的にも心理的にも結合している個人たちの散乱分布であるとした。また,彼は,社会には争点ごとに多数の公衆が存在するが,一人の人間が同時に複数の公衆に所属することはできないと指摘した。
3.G.ル・ボンは,公衆を,空間的には広い地域に散在しながら,ジャーナリズムやマスコミが提供する情報に接触することによって,共通の関心などを持ち,合理的に思考し行動することのできる存在であるとみなした。
4.J.オルテガ・イ・ガセットは,ある程度の教養や私有財産を備え,自らの価値を自覚する文明人を「大衆的人間」と呼び,大衆的人間が社会の指導的地位に立てるようになった大衆社会の下では民主化が進行するとして大衆的人間を評価した。
5.W.コーンハウザーは,現代社会を大衆社会と位置付けた。彼は,非エリートのエリートへの近づきやすさと,非エリートのエリートによる操作されやすさの二つの変数を用いて社会類型を分類し,両者とも高い社会を「大衆社会」とした。
解 説
選択肢 1 ですが
タルドは、公衆を「群衆とは異なり、空間的に分散して存在し、コミュニケーションメディアでつながり、各人が独自の判断と意見を有し、世論を形成する主体」と定義しました。(H26no58)。群衆を定義した人といえば G.ル・ボンです。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
マンハイムは、著書『変革期における人間と社会』において、大衆社会の危険性について論じました。「公衆」について定義した人ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
G.ル.ボンは、群衆を「意識的人格を完全に喪失し、操縦者の暗示のまま行動するような集合体」と定義しました。(H26no58)。「公衆」について定義した人ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
オルテガの代表的著書「大衆の反逆」は、大衆の危険性を指摘した著書です。「大衆的人間を評価した」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
W.コーンハウザー による「大衆社会」についての記述です。(参考 H26no58)
以上より、正解は 5 です。
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